ウクライナから避難してきた子どもたちの未来を支える教育の場が資金難、このままでは閉鎖も…堀潤ルーマニア取材

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜6:59~)。9月29日(金)放送の「New global」のコーナーでは、ルーマニアにおける“ウクライナ避難民への教育支援”について取り上げました。

◆切れ目のない教育機会、友人関係を維持するためにも…

つい先日まで、ルーマニアでウクライナ避難民を取材していたキャスターの堀潤。この日はウクライナから避難してきた子どもたちの教育の現状について報告します。

ルーマニア北部にある街「ヤシ」にあるマルチ・サービス・センターは、ルーマニア政府とユニセフ(国際連合児童基金)協力のもと、ウクライナ各地から避難してきた幼稚園生から高校生まで275人が通う学校として機能しています。

授業はウクライナにいる教師とオンラインで繋ぎ、子どもたちに切れ目のない教育機会を提供。さらに、この授業は戦争によってバラバラになった子どもたちをオンラインで繋ぐ貴重な場にもなっています。

ユニセフのシニア緊急調整官ジョン・ベノワー・マナさんも「子どもたちはウクライナでの友人関係をオンライン授業に参加することで維持することができる。ヨーロッパ各地にいる避難者たちと繋がることができるから。そして、社会的なスキルや母国に対する帰属意識も養えます」とこの施設が持つ大きな意義について言及。

さらに、ここではルーマニア語の授業や現地の子どもたちと一緒に体験する課外授業なども展開。ウクライナの子どもたちが、避難先の環境に溶け込むことができるようさまざまな工夫が施されています。

ユニセフの緊急コミュニケーション・スペシャリスト・根井麻未さんは「(2年生のクラスでは)ルーマニア語も上達し、先生と一緒にみんな歌を歌えるようになっている。そうしたことがルーマニアの生活をするための基礎になるし、これでルーマニア人の友達がたくさんできれば」と望みます。

◆子どもたちの未来を支える場が資金難、このままでは閉鎖も…

この施設に通う高校生に話を聞いてみると、ザポリージャから避難している男子高校生は開口一番「こんにちは、日本はかっこいい国です」と見事な日本語を披露。これには思わず驚きの声を上げる堀。

別の生徒に授業について聞いてみると「オンライン授業はとても楽しい。宿題もそれほど難しくないし、だいぶ慣れた。家族とも一緒にいられるので楽しいです」との声が。

さらに、別の女子高校生に夢を聞いてみると「それはきっとウクライナに帰ること」と切実な思いを吐露。「そして、再び家族で一緒に暮らすことです。父は兵士で、今、ウクライナで戦っています。私は父と一緒にいたい。私の家族だから」と胸の内を明かします。

また、この施設では自閉症や発達障害など、さまざまな子どもたちが安心して通えるよう専門家を配置。障害児を育てる母親は「私は息子を育てなくてはならない。だから、この学校が必要だし、専門家が必要」と話していましたが、実はこの施設は大きな問題を抱えています。それは資金の問題です。

戦争が長引くなか、この施設が多くの子どもたちの未来を支えていますが、現状、施設を運営するための資金の目処は2024年2月まで。もしも今後も資金が集まらなければ、この施設は閉鎖されてしまいます。

前出のジョン・ベノワー・マナさんは「ここは素晴らしい学校。しかし、たった約300人の子どもたちしか受け入れらない。本来ならルーマニアには2,700人の子どもたちが避難しています。ここと同じような学校がまだまだ必要。全ての子どもたちを支えるためにも。しかし、私たちだけでは(それは)到底できない」と訴えます。

◆ユニセフは日本に支援を要請…日本政府の貢献のあり方とは

ルーマニアのユニセフはこうした施設を継続させていきたいと考えているものの資金が足りず、日本政府に対しても援助をリクエストしているそう。現地で取材した堀は「日本語が上手な学生もいたが、彼は日本のアニメが大好きで独学で日本語を学んだ。こうして日本に対して親近感を持つ子どももいるなか、日本の貢献のあり方が問われている」と日本政府の動向を注視。

株式会社POTETO Media代表取締役の古井康介さんは「もちろんお金だけじゃないと思うし、お金の議論も必要だと思うが、できることはやりたい」とやる気をのぞかせ、施設の継続に必要な資金6億円に関しても「1億人いれば1人6円。その10%の人であれば、60円で集まるお金」と話します。

国際社会文化学者のカン ハンナさんは「このような報道があるからこそ動きを作れると思う」とメディアの波及力に期待を寄せつつ、「必要としているところにちゃんとお金が集まれば。子どもたちは社会の未来」とこうした施設の重要性を指摘。

また、元裁判官で国際弁護士の八代英輝さんは、「(ウクライナの)ゼレンスキー大統領が国連で国連改革の必要性を唱えたときに岸田首相が隣にいたのは偶然ではないと思う。国連改革を訴えるなかで、国連の重要な役割として、子どもたちの教育に正面から取り組むべき」と世界的な変化を熱望していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 6:59~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

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