社説:細田議長辞任へ もう逃げは許されない

 「国権の最高機関」の長として、無責任極まりない退き方ではないか。

 細田博之衆院議長が辞任の意向を固めた。20日召集の臨時国会で認められる見通しだ。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との深い関係が指摘されたにもかかわらず、公開の場では口を閉ざしたままである。

 7月以降、熱中症や検査のため入退院を繰り返していたとはいえ、「体調に自信がない」という辞任理由は釈然としない。

 2021年衆院選後に議長に就任するまでの約7年、細田氏は自民党最大派閥の細田派を率いた。旧統一教会と自民との関係を強めたとされる岸信介元首相からの流れをくむ、今の安倍派である。

 岸氏の孫である安倍晋三元首相の銃撃事件を機に自民と旧統一教会の関係が問われる中、細田氏は16年参院選で教団の組織票を割り振りしたとの疑いが持たれた。だが、教団との関係を認める文書を公表するだけだった。

 今年1月になって、衆院議院運営委員会の与野党代表を集めた非公開の場で、票の差配は「思い当たる事実はない」と否定する一方、安倍氏と教団は「大昔から関係が深い」と明かした。以降、自身への疑問に答える場は設けず、通常国会も議長席に座り続けた。

 細田氏は「過去のことについて議長の立場で記者会見し答えるのはふさわしくない」と語っていた。辞任するのであれば、そんな詭(き)弁は意味をなさなくなる。説明責任を果たさねばならない。

 昨年、教団との接点を調べた際に対象者から衆参議長を外した自民の対応も改めて問われよう。

 小泉純一郎政権の官房長官、麻生太郎政権での自民幹事長と要職を歴任してきた細田氏だが、議長就任後の言動を振り返れば、そもそも立法府の長にふさわしかったのかという疑念が拭えない。

 国会で決めた衆院小選挙区定数「10増10減」に否定的な発言を重ね、「国会の権威は丸つぶれ」と伊吹文明元衆院議長からも批判された。セクハラ疑惑が報じられても説明から逃げ続けた。

 内閣を監視し、公正に議論をつかさどるべき議長の言動で国会の威信を傷つけ、政治不信を深めたのは憲政史に残る汚点ではないか。

 自民は旧統一教会との接点の調査を議員の自己申告に委ねて済ませている。真相解明には、総裁である岸田文雄首相の踏み込んだ対応が欠かせない。

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