見附島、枝枯れ拡大 カワウ営巣被害「20~30年で増加」

見附島を真上から撮影した写真。白く枝枯れした樹木が広範囲に及ぶことが見て取れる

  ●本社調査

 北國新聞社が取り組む珠洲市宝立町鵜飼(うかい)の石川県天然記念物・名勝「見附島(みつけじま)」の調査で、島の樹木に枝枯れが相次いでいることが6日までに、ドローンを使った空撮で判明した。樹上で営巣する水鳥・カワウの被害とみられ、鳥類の専門家は「20~30年前からカワウが目立つようになった」と指摘する。枝枯れは広範囲にわたり、波風の浸食に加え、5月の奥能登地震を含む一連の群発地震で崩落が進む島が、植生も危険にさらされている実情が浮かび上がった。

 ドローンによる撮影は、北國新聞社が珠洲市と締結した包括連携協定に基づく取り組みとなる。8月に空撮が行われ、上空から島を捉えた写真で、樹木の所々で枝枯れが確認された。

 鳥類を専門とする金大能登学舎(珠洲市)の岸岡智也特任助教は枝枯れについて、「カワウの生息数が増えたことによる被害だ」と説明する。カワウは樹木や土壌を酸化させるふんを落とし、枝葉を巣の材料とすることで、木を弱らせたり、枯らせたりする。

 岸岡特任助教が見附島近くの住民から聞き取った話では、島は30年ほど前までカラスがねぐらにしていたが、その後、カラスに代わってカワウが見られるようになった。

 岸岡特任助教は「生息数の推移を継続して観測するなどし、島の環境を注意深く見守っていかなければならない」と語った。

  ●立ち枯れも確認

 樹木・植物の専門家である県林業試験場(白山市)の小谷二郎森林環境部長は空撮写真により、2本の立ち枯れを確認した。枝枯れの要因について、カワウ被害に加え、海に浮かぶ島の立地状況を挙げる。

 木は強風に弱く、見附島の植生は風の影響で樹木が枯れやすい。小谷部長は「枝枯れは広範囲に及ぶが、全体的に枯れた木は少ない。島の植生がすぐに壊滅する事態には至らないのではないか」と話した。

  ●県教委「支援は可能」 植生回復

 島は2017年に県天然記念物・名勝に指定される際、県文化財保護審議会メンバーが島の植生を調査した。所管する県教委の担当者は見附島の枝枯れについて「薬剤散布や土壌改良といった植生を回復させるための支援は可能だ」との見解を示す。ただし、支援には専門家の意見や観測データが前提とした。

 ドローンを使った撮影・調査は、北國新聞社の手取川環境総合調査に加わる地質、植物の専門家らが参加。撮影は建設コンサルタント「地域みらい」(中能登町)が担う。島の地層や形状を精密に調べるため、レーザーによる撮影・分析も進めている。

 ★見附島 珠洲市の南側、見附海岸沖に浮かぶ。モチノキやタブノキなどの群落があり、樹上で集団繁殖するカワウ、サギが生息する。珪藻土(けいそうど)が堆積した泥岩の層で構成され、船が浮かんだような形状から「軍艦島」とも呼ばれる。高さ約28メートル、長さ約160メートル、最大幅約50メートルで、波風の浸食で年々小さくなっており、群発地震で斜面の崩落も進んでいる。

 ★カワウ ペリカンの仲間で、体長約80センチ、体重約1.5~2.5キロの大型の水鳥。環境省などによると、昭和30~40年代に環境汚染や干潟の埋め立てなどで激減し、全国で3千羽まで減って絶滅の恐れにあった。環境改善に伴い、平成に入るころから急激に増加。水に潜って大量の魚を捕食することから、国内各地で漁業被害が深刻化している。

全国的に生息数が増えているカワウ(岸岡特任助教提供)

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