衆院長崎4区補選 告示直前情勢 勝敗の鍵は佐世保の戦い 金子氏と末次氏、支持拡大に懸命

 衆院長崎4区補選の告示が10日に迫った。出馬を準備する自民新人で元会社員の金子容三氏(40)と立憲民主比例九州現職の末次精一氏(60)は事務所開きを終え、各地で総決起大会や街頭演説をこなすなど支持拡大に懸命だ。告示直前の情勢を探った。

□金子陣営
 「差は2.5ポイント。本当に勝てるのか」。9月下旬、党本部が実施したとされる情勢調査が陣営内を駆け巡り、衝撃が走った。
 祖父岩三氏(故人)、父原二郎氏から続く地盤。若さや東京・海外での民間経験。4区の議席を守ってきた政権与党としての強み。初陣ながら「戦う条件はそろっている」とされた。だがそれは同時に世襲批判、知名度不足、支持率低迷と表裏の関係性も持つ。
 「有権者がどう感じるか…。選挙戦で“裏”ばかり目立つようなら負けもある」。陣営の一人は思ったより伸びていない情勢の数字を眺めながら言う。
 陣営が気にするのが有権者の7割弱を占める佐世保市。過去5回の衆参院選での自民候補の得票が、非自民候補を合わせた得票を上回ったのは1回だけ。その1回の2019年参院選も辛勝だった。
 「佐世保を互角に戦えば全体で引き離せる」と見立てる陣営。シナリオ成就の鍵を握る一人が、これまで態度を鮮明にしてこなかった宮島大典市長だ。
 「国の中枢に入る政治家として羽ばたいてほしい」。5日、宮島市長は金子氏の総決起大会であいさつ。会場から大きな拍手が起こった。ただ市長選では末次陣営を支える労組などから支援を受けた経過もある。市議の一人は「本当に汗をかいてやるかは分からない」とつぶやく。

□末次陣営
 佐世保市での戦いが勝敗を分けると見立てるのは末次陣営も同じだ。
 「相手の周辺市町での地盤の強さを考えれば佐世保で1万票以上の差をつけないと勝てない」。陣営関係者は情勢をこう分析する。
 前回衆院選は佐世保市で自民候補に約2700票の差をつけた。陣営の分析に照らすと、その4倍以上の票差が必要となる。
 支持拡大には国会議員としての活動と実績が必要になるが、先の陣営関係者は「正直、活動が有権者に見えにくく、現職のアドバンテージはほぼない」。アピールポイントの少なさを口にする。
 社民、連合長崎の推薦に加え国民民主、共産の「支援」も取り付け、野党で戦う形は整った。だが依然として連携には不安が残る。
 国民民主の佐世保市議は、同県連幹部の協力要請にも首を縦に振らず、陣営と距離を置く。1日の事務所開きにも姿を現さなかった。市議の1人は「普段から付き合いがないのに応援できない。自分はてこでも動かん」とつれない。
 さらに今春の市議選に立民の公認・推薦で出馬した3人はいずれも落選。足元も盤石とはほど遠い。
 「いかに“火”をつけて反自民票を取り込んでいけるかが大事」と陣営関係者。だが具体的な戦略は描けないまま、選挙戦に突入しようとしている。

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