三島と友情、尊敬 文芸評論家の尾崎氏講演 高志の国文学館のドナルド・キーン展

キーン氏について語る尾崎氏=富山市の高志の国文学館

 富山新聞創刊100年の企画展「ドナルド・キーン-世界から見た日本文学展」(高志の国文学館、富山新聞社主催)の講演会は7日、富山市の同館で開かれた。文芸評論家の尾崎真理子氏が、キーン氏と作家三島由紀夫の関係について解説した。2人は友情と尊敬で結ばれていたとし「作家と研究者として客観的に自由に言い合える関係でいることを大切していたのではないか」と強調した。

 キーン氏は日本の文学史などを研究し、三島のほか谷崎潤一郎や川端康成らとも交友を深めた。

 尾崎氏は、2010年にドイツで開催された三島由紀夫のシンポジウムの際にキーン氏が寄せた文章を示し、三島が遺作となった長編小説を完結させた時にキーン氏に「もう死ぬ以外に何も残っていない」と打ち明けたことなどが書かれていると説明した。

 三島の自決後、三島と同時代の作家との交流が減っていったことから「キーン氏の関心は三島に集中していた」と指摘した。

  ●日本文化に敬意

 キーン氏は2011年の東日本大震災後に日本国籍取得を表明し、12年に取得した。尾崎氏は、キーン氏は11年の瀬戸内寂聴氏との対談で「天変地異が多い日本で日本文化が継続していたことに敬意を払い、日本人と生きていきたいと語っていた」と紹介した。

 企画展は、キーン氏の直筆原稿や手紙、写真、著作など244点が並ぶ。三島がキーン氏に当てた書簡やブロマイド、自決前の三島とのエピソードをしたためた直筆原稿も展示されている。

 8日午後2時から担当学芸員によるギャラリートークが行われる。展示は11月27日まで。観覧料は一般500円、大学生250円、高校生以下は無料。

キーン氏と三島のゆかりの品を見る来場者

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