琵琶湖沿いにある公園、大半の遊具がまさかの「使用禁止」子ども連れの利用者ら困惑

「使用禁止」のコーン標識が置かれたクライミングの遊具

 琵琶湖を埋め立てて造られた人工島の中にある矢橋帰帆島(やばせきはんとう)公園(滋賀県草津市)で、大部分の遊具が使えない状態となっている。公園のホームページに詳しい理由は掲載されておらず、再開の時期も不明。週末には地元だけでなく、京都から訪れる子ども連れも多い湖国有数の公園だけに影響は必至だ。暑さが和らぎ利用者の増加が見込まれる中、困惑が広がっている。

 遊具が設置されているのは園内の一角にある「子どもの広場」で1994年にオープンした。交通至便な場所にありながら広大な敷地を有する公園で、県内の子育て世代の定番スポットとして親しまれている。

 爽やかな秋晴れに恵まれた9月下旬の日曜。人気のローラースライダー(滑り台)をはじめクライミングやアスレチックなど多くの遊具に「使用禁止」と書かれたコーン標識が置かれたりビニールテープが貼られたりしていた。2人の子どもと遊びに来た大津市の30代男性は「まさか使用禁止になっているとは思っていなかった。子どもたちはびっくりして言葉も出てこない様子だった」と声を落とす。所管する滋賀県南部流域下水道事務所は「業者による点検の結果、現在の安全基準を満たしていないことが判明した。事故が起きてはいけないので利用を停止した」と説明する。

 2018年に都市公園法が一部改正され、遊具の定期点検などが義務付けられた。都市公園ではない帰帆島公園では、これまで日常点検での劣化診断は実施してきたが、定期点検による規格基準診断は行ってこなかった。県では本年度「魅力ある公園づくり」に力を入れており、「子どもが使うのは一緒なので、法定基準並の点検をすべきだということになった」(担当者)という。30年近く前に設置した遊具は現在の基準には準じず「不適合」の烙印(らくいん)を押された格好だ。

 使えなくなった遊具は今後どうなるのだろうか。担当者は「修繕や撤去をするにしても予算との兼ね合いがあり、現時点では時期を含め何もお示しできない」と明言を避けた。子どもの遊び場の安全管理に詳しい一般社団法人「いんふぁんとroomさくらんぼ」(向日市)の松野敬子代表理事は「リスクに目をやらずにただ放置してきた状況がようやく改善に向かい始めた」と今回の対応について一定評価する。一方で、「遊びに何を求めるのかを明確にしない限り、事故をなくすことのみに動いてしまう。質のいい遊び場を作るためには、行政だけでなく教育や保育の現場の人などが関わるのが大事だ」と指摘する。

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