〈奥能登国際芸術祭2023〉珠洲各地でアート満喫 1日の鑑賞者、最多3000人

商店街をまち歩きし、個性的な店舗の文字を見て回る「のらもじプロジェクト」参加者=珠洲市飯田町

  ●レトロ文字探し、ライブ

 珠洲市全域で開催中の奥能登国際芸術祭2023(北國新聞社特別協力)は8日、市内各地でアートに触れるワークショップが開かれた。市中心部の飯田町では看板や店舗のレトロな文字を探す「のらもじプロジェクト」が行われ、普段は人影がまばらな商店街に、まち巡りで行き交う人たちの姿が見られた。同日の鑑賞者数は3千人を超え、会期中、最多の人出となった。

 「のらもじ」は、まちなかでひょっこり出合う野良猫になぞらえた呼称で、パソコンやワープロがなかった時代に業者、店主が手書きで製作した文字を指す。参加者は商店街を散策し、レトロな趣を演出する「のらもじ」を楽しんだ。

 川崎市から友人と訪れた及川浩さん(63)は「同じ形状の文字はなく、どれも個性的だ。商店街を歩いていると懐かしい雰囲気が漂ってくる」と話し、地元に住む加須屋かおりさん(53)は「通い慣れた商店街の面白さを再発見できた」と目を輝かせた。

 商店街で陶器を扱う山口外美子さんは「芸術祭で人が増えたが、きょうは特に多い。このにぎわいが続いてほしい」と願った。先月23日に開幕した芸術祭は、8日までの総鑑賞者数が約1万4千人となっている。

 旧上黒丸小中では、美術作家・鈴木泰人さんとサウンドデザイナー・伊藤豊さんによるライブパフォーマンスがあった。卒業生がカセットテープに録音した校歌が披露され、廃校となった旧校舎に歌声が響いた。

 蛸島町の旧島崎家では、くぎを使わない組子細工でコースターを作り、漆を塗るワークショップが開かれた。同所で作品を展示する漆芸作家の田中信行金沢美大教授が講師を務めた。

珠洲の波の音や生活音が流されたライブパフォーマンス=旧上黒丸小中

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