【ミャンマー】国連はミャンマー問題への対応失敗=専門家[政治]

国連の元特別報告者らが創設した「ミャンマーのための特別諮問評議会(SAC—M)」はこのほど、国連はミャンマー問題への対応に失敗していると批判する報告書を発表した。

SAC—Mは、国連加盟国や同事務局、ミャンマーを担当するカントリーチーム(UNCT)などによる、2021年2月の軍事クーデター後のミャンマー問題への対応を検証。人権団体や人道支援団体への聞き取りなども行った結果を報告書にまとめた。

報告書では、国連がミャンマー危機の重大さに即した対応を怠った一方、その行動への外部からの批判を無視したと指摘。また、グテレス事務総長がミャンマー国民に対する自身の責務を軽視していると批判した。

その上で国連安全保障理事会に対し、ミャンマー問題について包括的かつ一貫した戦略を策定するよう主張。ミャンマーへの武器禁輸を定める決議を採択するとともに、国軍高官、国軍傘下企業とその子会社を対象とする金融制裁を実施するよう求めた。

各地で不足する人道支援物資の供給については、民主派の立ち上げた挙国一致政府(NUG)や少数民族武装勢力などと直接調整すべきだと説明。また国連総会で、民主派のチョーモートゥン国連大使の留任を認めるよう呼びかけた。

SAC—Mは、21年3月に韓国の李亮喜氏、インドネシアのマルズキ・ダルスマン氏、オーストラリアのクリストファー・シドティ氏が創設した。李氏は、国連の元特別報告者としてミャンマーの人権状況を担当。ダルスマン氏とシドティ氏は、イスラム教徒少数民族ロヒンギャの迫害を巡り国連人権理事会が設置した国際調査団の団長と団員を務めた。

国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、ミャンマーでは23年1月初旬の時点で、総人口5,600万人のうち2,500万人以上が貧困状態にあり、1,760万人が人道支援を必要としていた。また、同時点で150万人だった国内避難民は、8月末時点には190万人まで増加した。

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