【アジア】【カフェビジネス最前線】 中国で人気広がる 雲南コーヒーとは[サービス]

上海市では雲南コーヒーを楽しめるカフェが増えている

中国・雲南省産のコーヒー豆が同国の市場で存在感を強めている。カフェの数が世界で最も多いとされる上海市では、雲南コーヒーを楽しめる専門店も登場した。全国的にコーヒー文化が浸透し始める中、華やかな酸味を感じられる雲南コーヒーは、チェーン店でも取り扱いが拡大している。

中国南部の雲南省は、同国最大のコーヒー豆の産地だ。1988年にスイス食品大手ネスレなどの企業がコーヒー栽培を始めたことを機に、コーヒー産業が発展。栽培に適した土地や気候も追い風となり、中国のコーヒー産地としての地位を確立した。

主な栽培品種はアラビカ種。エチオピアを原産地とする商業用では主流の品種で、普ジ市(プーアル市、ジ=さんずいに耳)や臨滄市、保山市を中心に省内各地で盛んに生産されている。近年は「雲南小粒種コーヒー」と呼ばれる独自ブランドが国内外の市場で注目を集める。

プーアル市でコーヒー豆農園を営む女性は「雲南コーヒーはフルーティーな味わいが特徴。口当たりが柔らかいので飲みやすい」と話す。コーヒーを飲む習慣がある沿海都市では引き合いが高まっていると強調する。

■カキやトリュフ、足してアレンジが人気

上海市には雲南コーヒー専門のカフェ「徳宏珈琲(DeHome Coffee)」がある。アメリカンコーヒーやカフェラテのほか、レモンやカキ、トリュフなどを使った特徴的なコーヒー飲料を提供する。

店でバリスタを務める男性は「中国では紅茶を楽しむ時のようにコーヒーに何かを足してアレンジした飲み方が好まれている」と述べ、「濃厚な味わいになる乳製品を加えたコーヒーや、すっきり爽やかな味となる果汁などと組み合わせたコーヒー飲料が人気」と説明する。酸味のある雲南コーヒーは中国茶との相性がよく、コーヒーと茶をブレンドした飲料も売れ筋という。

雲南コーヒーを専門に扱う新興コーヒーチェーン「四葉珈(CLOVES COFFEE)」も出店を拡大している。四葉珈は2021年6月、雲南省昆明市で1号店を開業した。コーヒー豆だけでなく、飲料に使用する花やフルーツ、茶葉も雲南産。看板商品には、梅の実を使ったコールドブリューコーヒーやジャスミン茶を加えたラテなどがあり、主に15~20元(約300~400円)で販売している。

雲南省のほか、貴州省や陝西省、安徽省にも出店地域を広げ、9月に100店を突破。四葉珈は6月時点で既に200店以上の新規出店が決まっており、年内に300店体制となる見通しだ。

米コーヒーチェーン大手スターバックスも12年から雲南産コーヒー豆の取り扱いを始めた。過去10年間で中国市場向けに計5万トン以上を調達し、10種類のコーヒー豆商品を開発。国内6,000店以上で販売した実績がある。海外市場向けには10年間で4万トン以上を販売した。

■コーヒー消費量、1人が年間10杯

雲南省農業農村庁によると、中国の21年のコーヒー豆生産量は前年比17.9%減の10万9,088トン。コーヒー豆を生産する世界78カ国の中で13位の規模。高品質コーヒーとされる「スペシャリティーコーヒー」の割合は約8%だ。

21年の生産量のうち、雲南産は99.6%を占めた。雲南省はアラビカ種の生産に適した環境で、生産量を押し上げている。雲南のコーヒー産地は11市・州、33県で、このうち23県は辺境に位置する。

中国の21年のコーヒー豆消費量は25.4%増の25万2,000トンで、世界8位の規模だった。消費は毎年15%の速度で成長し、世界平均(2%)を大きく上回る。21年時点のコーヒー市場の規模は1,700億元を超えた。

大都市ではコーヒーがよく飲まれているものの、中国人1人当たりに直すと、年間コーヒー消費量は10杯程度にとどまっているとのデータがある。米国の300杯以上、日本の280杯からは隔たりが大きい。

ただ所得の向上やチェーン店の地方開拓強化などを追い風に、中国市場は全国的に成長する流れにあり、今後コーヒーをたしなむ習慣が浸透するにつれて雲南コーヒーの需要もさらに拡大しそうだ。

上海市にある雲南コーヒーの専門店「徳宏珈琲(DeHome Coffee)」

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■フルーティーで飲みやすい、帰省の土産に雲南コーヒー

今年4月、雲南省産のコーヒーをかばんに詰め込んで、日本へと帰省した。雲南省を旅行した際、立ち寄った喫茶店で注文したドリップコーヒーがおいしく、土産にとたくさん買い込んだ。日本にいる家族や友人に喜んでもらえると思った。

コーヒー好きの両親に飲んでもらうと「フルーティーで飲みやすい」と顔をほころばせた。雲南コーヒーは口当たりが柔らかく、苦みが後を引かないのが特徴。南米産のコーヒーをよく飲む両親にも好評だった。

雲南省は中国産コーヒー豆のほぼ全てを生産している。昨年上半期(1~6月)の輸出量は1万8,000トンで、前年同期の3.3倍に急伸した。

中国国内では雲南コーヒーを扱う店が増えているが、日本ではまだまれ。ただ輸出量が大きく増える中、日本の喫茶店で雲南コーヒーにお目にかかる日もそう遠くないかもしれない。

土産にした雲南コーヒーの製品

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※アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2023年10月号<https://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。

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