外来カミキリ生息拡大 樹木に穴、県内5自治体で確認 富山市科学博物館学芸員ら調査

樹木に成虫がいないか調べる職員=富山市の県中央植物園

 カミキリムシの仲間で外来種の「ツヤハダゴマダラカミキリ」の生息域が富山県内で広がっていることが、富山市科学博物館の岩田朋文学芸員らの調査で分かった。もともと確認されていた富山市に加え、射水市、魚津市、上市町、舟橋村でも見つかった。同種は樹木を傷付けて弱らせるため農業や森林などへの被害が懸念され、国は9月に規制が厳しい特定外来生物に指定。県内でも警戒が強まっている。

 ツヤハダゴマダラカミキリは中国や朝鮮半島などが原産で、成虫は体長2~4センチ。街路樹などの幹に穴を開けて産卵し、幼虫が幹の内部を食べることにより、木が枯れ、倒木の恐れが生じることもある。林野庁によると、国内では5月までに富山など11県で生息が確認された。

 岩田学芸員によると、富山市で2010年などに採集された個体の標本が市科学博物館に所蔵され、13~19年には市内で撮影されていたことが21年に判明した。認知度の低さや、在来種と似た外見のため気付かれていなかった。

 岩田学芸員らは21年8~10月と22年6~9月、県内の分布を調査。道路沿いや公園の樹木などを目視で調べ、情報収集したところ、富山、射水、魚津の各市と舟橋村の35地点で死骸を含め326匹が見つかった。今年7月には上市町内でも初めて確認された。

 発見場所の大半は富山市の神通川と常願寺川に挟まれた平野部で、この地域に多く生息し、盛んに繁殖しているとみられる。岩田学芸員は「さらに増えれば、どんな被害が出るか分からない。まずは実態の把握が必要だ」と指摘した。

  ●トチノキ衰退、伐採 県中央植物園

 富山市婦中町上轡田の県中央植物園では21年8月以降、敷地内の樹木でツヤハダゴマダラカミキリの発見が相次ぎ、産卵の穴も見つかった。特に入園口のトチノキは樹勢の衰退が目立ち、同園は今年春までに6本のうち4本を伐採した。

 同園の早瀬裕也主任は、因果関係は明確には分からないとした上で「もともと弱っていたところに追い打ちをかけられたのではないか」と推測した。

 県の担当者は、被害を防ぐには早期発見や駆除が必要と説明。特定外来生物の指定を受け、ホームページで注意喚起する準備を進めているとした。

 21、22年の調査結果をまとめた岩田学芸員、早瀬主任らの論文は、市科学博物館研究報告に掲載された。

ツヤハダゴマダラカミキリの雄(左)と雌=富山市科学博物館

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