バーゲンやめ限定店連発 「北陸初」売りに波及狙う

創業100年を迎える大和の香林坊店=金沢市香林坊

 百貨店を運営する大和(金沢市)は15日、創業100年を迎える。日本海側初の百貨店として金沢・片町で産声を上げた大和は、地方百貨店が次々と姿を消す苦境の時代にどう対峙しているのか。郊外店が増加し、商圏が絶えず変化する中、「地域一番店」の今を追った。(経済部・室屋祐太)

 「創業100年だけど、バーゲンやセールってやらないの?」。金沢市の香林坊大和の常連客から、こんな声を聞いた。

 百貨店といえば、周年や季節の変わり目で、全館挙げてのバーゲンを行うイメージがある。ましてや100周年なら、大々的に展開しても良さそうなものだが、店内を見回しても、のぼりやポスターなどは見当たらない。

 大和の宮二朗社長に尋ねると、「郊外店と同じような安売りでは戦えない。大和にしかない商品・企画を打ち出していくのが、これから生き残る道になる」と返ってきた。

  ●百貨店4割減

 石川の郊外店といえば、人口当たりの店舗数が全国指折りに多いイオンが思い浮かぶ。

 1995年、当時ジャスコ会長の岡田卓也氏が金沢を訪れ、大和の会長だった宮太郎氏に大型店の共同開発を持ちかけたが、宮氏が断った因縁めいた過去がある。その後、イオンは金沢を取り囲むように、かほく、小松、白山にイオンモールを次々と開業させた。

 往時はまちなかの一等地で客を集めた百貨店だが、かつて顧客だった世代は高齢化が進む。価格帯が安く、車で行きやすい郊外店に客が流れるのは避けられなかった。

 全国では、インターネット販売も浸透し、ピーク時(1999年)に331店あった百貨店は2023年8月現在、4割超の減少となる181店になった。

 こうした状況で、香林坊大和は、これまで集客の要とみてきた全館でのバーゲンを「封印」し、北陸初進出となる和菓子や雑貨などの期間限定店の企画を連発した。

 香林坊店では、高級ようかんの「とらや」は昨年3月から3度、同じく老舗和菓子の「たねや」、人気雑貨店の「ディーン&デルーカ」は2年前から4度それぞれ限定店を出し、そのたびに行列ができている。

 岡本志郎常務・香林坊店長は「北陸唯一を売りに集客し、他のフロアにも波及効果が出ている」と手応えを語る。

 1階化粧品売り場や2階婦人服売り場には、20~30代向けのブランドを入れた。従来は「百貨店のイメージに合わない」と敬遠してきた人気のアニメやキャラクターの催事も積極的に企画し、新たな客層の開拓にシフトしている。富山店も、婦人服売り場や紳士服売り場をてこ入れした。

 「コロナ下も地域に支えていただいた」。12日、23年8月中間期の決算会見に臨んだ宮社長はこう語った。

 コロナ下の2020年に創業以来初めて1カ月半にわたる休業を余儀なくされたものの、郊外店と一線を画す限定店の連発などで、香林坊店の売り上げは19年水準まで回復した。リーマン・ショック後の2010年に新潟3店、小松店、19年に高岡店を閉じながら、したたかに生き残ってきた百貨店の101年目が始まろうとしている。

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