職場で個人の荷物受け取りOK 富山県内企業、再配達削減へ取り組み強化

事業所に届いた個人宛の荷物を確認する担当者=三幸本社

 運転手の人手不足が深刻化する物流業界の「2024年問題」を見据え、社員の個人的な荷物を職場で受け取れるようにする動きが、富山県内の企業で広がっている。再配達を減らして宅配業者の負担軽減に貢献し、社員の利便性向上にもつなげる狙いだ。県は、昨年に続いて職場での受け取りを推進するキャンペーンを11月にも実施し、普及を後押しする。

 通信販売市場の拡大で、宅配便の個数は増加傾向にあり、全国で再配達率の高止まりが課題となっている。国土交通省によると、今年4月の再配達率は約11.4%。前回調査(2022年10月)から0.4ポイント減ったものの、20年10月以降は11%以上が続いている。12%となった場合、年間約7万人分の運転手の労働力が必要となり、国は24年度に6%に引き下げる目標を掲げている。

 プラスチック用金型設計・製造の三幸(高岡市荒屋敷、窪田彰克社長)は、県が昨年実施したキャンペーンを機に、職場受け取りの取り組みを始めた。業務用の荷物と一緒に届く個人宛の荷物を事務担当者が仕分け、従業員に渡している。月に1、2個程度と数は少ないが「再配達の連絡の手間がなくなり、家族へのプレゼントも受け取りやすい」と利用者から好評という。

 同社は業務用の小さな部品を宅配便で調達しており、窪田素子監査役は「宅配業者の忙しさは毎日のように目にして感じている。少しでも負担が軽くなれば」と話す。

 県が22年11~12月に実施したキャンペーンには、61社138事業所が参加し、約8割が「今後も継続したい」との意向を示した。

 昨年のキャンペーンに参加した北陸電力は、今も取り組みを継続し、約50ある全事業所で導入している。各職場の窓口で従業員を呼び出してもらい、荷物を受け取っている。勤務に支障を来さないため、代引き支払いを控えるよう周知。同社は「個人で使うパソコンの周辺機器や飲料を職場に直接配達してもらえて便利」と効果を挙げる。

 富山銀行も「SDGs(持続可能な開発目標)や、働きやすい職場の実現につながる取り組み」として全31営業拠点で導入している。

 職場受け取りは配達業者側にもメリットが大きい。県内に拠点のある宅配大手の担当者は「再配達の削減だけでなく、職場に集約されることで届ける軒数が減り、配達効率が上がる」と説明。窓口業務の負担増や、プライバシーの保護といった課題に対しては「宅配ボックスの設置推進や置き配の活用など、さまざまな切り口で受け取りやすさを高めることが重要だ」と指摘する。

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