批判…夜コンビニや公園に集まるクルド人ら、住民とトラブル頻発 一方で治安を改善したいクルド人は自主パトロール開始、たむろするクルド人に注意 ごみ拾いも 密着した写真家、変わろうとする姿を撮影 川口で「在日クルド人」展を開催

展示された写真を見る来場者=12日午前10時半ごろ、川口市並木元町

 埼玉県内で暮らすクルド人の現状を知ってもらおうと、川口市並木元町の市立アートギャラリー・アトリアで写真展「在日クルド人 来日の背景と埼玉での暮らし」が開かれている。入管難民法の改正やクルド人同士による殺人未遂事件など、地元住民との共生の在り方について、議会や交流サイト(SNS)などさまざまな場所で議論されている昨今。在日クルド人を撮影し続けてきた写真家ら3人による作品は県内のクルド人がどのように暮らしているのかを紹介している。

■多面的に知って

 出入国在留管理庁(入管庁)によると、県内で多くのクルド人が暮らしている川口市の在留外国人数は昨年末時点で約4万人。市区町村別では東京都新宿区に次いで全国で2番目に多く、市は多文化共生の施策や催しを展開している。しかし近年は騒音や交通ルールなど、言語や文化の違いからクルド人と地域住民の間でトラブルが頻発し、SNSなどで在日クルド人への批判的な書き込みが増えている。

 写真展を主催した支援団体「在日クルド人と共に」(蕨市)の温井立央代表は、トラブルによる摩擦を懸念しつつ、「多くの人は地域と関係を築いている。ネットの情報だけでなく、写真を通して多面的に県内クルド人のことを知ってほしい」と企画の趣旨を話す。

 会場にはクルドの歴史的背景や2月に発生したトルコ・シリア地震のほか、川口、蕨市で暮らすクルド人の日常が分かる写真約40点を展示している。

■自主パトロール

 展示作品のうち、写真家の鈴木雄介さん(39)は19点を出展した。日本語習得のために勉強する姿や家庭での食事、新年を祝う祭りや多くのクルド人が従事しているとされる解体現場での仕事、結婚式、小学校での入学式―。直近1年間の取材を通して撮りためた写真から、異なる文化や故郷から遠く離れた日本での日常を想起できる場面を意識して選んだ。

 写真の中には、摩擦が生じている地域の治安を改善しようと、9月ごろから始まったクルド人らによる自主パトロールを収めた1枚もある。

 パトロールは夜間にコンビニエンスストアや公園で集まっているクルド人らを注意したり、ごみ拾いなどを行っている。参加する在日20年以上の男性はカメラを向ける鈴木さんに、「子どもたちのために現状を変えないと」などと語り、仕事の後で疲れているにもかかわらず黙々と作業していたという。

 鈴木さんは県内のクルド人の現状について「乗り越えるべき課題に、自分たちから変わろうという意識が醸成されてきている」と指摘。「クルドの人がどのようにして生きているのか写真から感じてもらい、共生について考えるきっかけになれば」と話している。

 写真展は15日までの午前10時~午後6時(最終日は同3時半まで)。入場無料。問い合わせは、「在日クルド人と共に」(電話048.400.2267)へ。

 【クルド人】中東の山岳地帯の先住民族で世界に2~3千万人いるとされ、「国を持たない最大の民族」とも呼ばれる。公用語はクルド語。居住地域は第1次世界大戦後に現在のトルコを中心にイランやイラク、シリアなどに分裂した。少数民族として差別や迫害を受けて世界各地に逃れたが、日本国内では難民として認められたケースはほとんどない。県内は川口市や蕨市で3千人近くが暮らしているとされているものの、大半は在留資格がなく、一時的に出入国在留管理庁での収容を解かれた仮放免の状態となっている。

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