福井県小浜市の拉致現場、在日米大使館の公使が視察 「被害者を返せと北朝鮮へ発信」協力を約束 

拉致された現場周辺の海岸を視察する在日米大使館のジョン・ナイリン政務担当公使(左)=12日、小浜市青井(杉本哲大撮影)

 在日米大使館のジョン・ナイリン政務担当公使は10月12日、福井県小浜市を訪れ1978年に地村保志さん、富貴恵さん夫妻=ともに(68)=が北朝鮮工作員に拉致された現場を視察した。ナイリン公使は「わが国も日本とともに北朝鮮に対し『一日も早く拉致被害者を返せ』というメッセージを発信するなど、引き続き協力して問題に取り組みたい」と話した。

 在日米公使による小浜の拉致現場視察は初めて。拉致被害者が暮らす小浜市、新潟県柏崎市、佐渡市の3市で構成する「拉致被害者関係市連絡会」では、2021年から同大使館に対し、要職者による拉致現場視察を求めてきた。これを受けナイリン公使が今年3月、新潟県を訪問。曽我ひとみさん(64)と横田めぐみさん=失踪当時(13)=の拉致現場を視察した。

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 地村さん夫妻が拉致された小浜公園展望台(小浜市青井)では、ナイリン公使が福井県警本部担当者から説明を受け、「目撃者などはいたのか」「捜索時に証拠は残っていなかったのか」など当時の状況について積極的に質問していた。報道陣に対しては「拉致は自分では想像できないくらい恐ろしい出来事。北朝鮮がなぜこんなことをしたのか私には理解できない」と話した。

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 松崎晃治小浜市長とも非公開で面談。松崎市長は「公使からは『政権が代わろうとも拉致問題に真剣に取り組む』という力強い言葉をいただいた」とし、「日朝間の直接交渉実現にはアメリカの力が必要。引き続き米大使館訪問も行っていく」と力を込めた。

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