大分市の鬼丸さん、自宅に津軽塗の工房 映画「バカ塗りの娘」撮影の工房が実家【大分県】

「津軽塗の魅力を伝えたい」と話す鬼丸真由美さん=大分市横尾東
鬼丸さんの作品
鬼丸さんの作品

 【大分】大分市のシネマ5bisで上映中(20日まで)の津軽塗の伝統を守る家族をテーマとした映画「バカ塗りの娘」。撮影場所となった青森県弘前市の松山漆工房に生まれた鬼丸真由美さん(40)が、大分市横尾東の自宅に「うるし工房 彩道里(いろどり)」を開設している。映画では兄松山昇司さん(42)が津軽塗を指導した。「多くの人に津軽塗の魅力を知ってもらいたい」と張り切っている。

 松山漆工房は祖父末久さんが開いた。2代目の父継道さんは、日本伝統漆芸展東京都教育委員会賞を受賞するなど、トップランナーとして活躍したが2021年、64歳の若さで急死した。その後を継いだのが長男昇司さんで、若い感性で意欲的な作品を多く生んでいる。

 長女の真由美さんも小さい頃から、工房に入り浸って漆に親しんできた。昇司さんが継いだので保育士の道に進んだが、26歳で結婚した時は引き出物の箸を自ら手がけ、育休での帰省中もおわん作りを請け負うなどしてきた。

 5年前から夫の実家がある大分市で暮らし始めたが、体調を崩した継道さんが「自分の道具を誰かに引き継いで使ってほしい」と口にしたこともあり、亡くなった2日後に津軽塗の職人になることを決意。作業部屋の確保など準備をしながら、昇司さんに師事して技術を磨き、昨年4月に自らの工房を立ち上げた。

 津軽塗は「バカ塗り」と形容されるほど、塗っては研ぐの膨大な作業工程を繰り返して完成させる。鬼丸さんが目指すのは小さい頃から見てきた継道さんの作品と技法。「同じ物が作れないことは分かっているが、父の見ていた世界を少しでも見てみたい」と精進を続ける。

 西日本ではあまり知られていない青森の伝統工芸。鬼丸さんは昇司さんと県内や九州各県で個展を開いたり、陶磁器展やマルシェなどで作品を展示販売したりとPRにも力を入れる。「父が生前、津軽塗(の普及)は東京で止まっていると言っていた。大分に来たのは何かの縁かもしれない。こつこつと頑張っていい仕事をしたい」と話している。

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