石川遼は涙の惜敗「感情的になってしまったのは…」

日本オープンで3度目の2位(撮影/村上航)

◇国内メジャー◇日本オープンゴルフ選手権競技 最終日(15日)◇茨木カンツリー倶楽部 西コース(大阪)◇7315yd(パー70)◇晴れ(観衆7718人)

2打及ばず2位。日本オープン初制覇を惜しくも逃した石川遼は瞳をうるませながら言葉を絞り出した。「久しぶりにこれだけいいゴルフができた気がして…」。自らの充実感に触れた後で口にしたのは、7718人が詰めかけたギャラリーへの感謝だった。

「ちょっと感情的になってしまったのは、観客の皆さんに対して、というところしかない。楽しかった4日間でしたし、自分がこれだけ楽しくやれたのも、皆さんのおかげ。すごく力になりました」。最高の雰囲気の中で最後まで優勝を争えたことがうれしく、そして勝ち切れなかった悔しさがこみ上げた。

最終日は最も「バタバタした」が…(撮影/村上航)

2打差を追った18ホールは、いきなり暗雲がたれ込めた。1番は8Iを握ったセカンドのハーフショットが大きく右へ。いきなりボギーをたたくと、2番(パー5)では1Wショットが「ド右」に飛び出した。最初のバーディを奪った直後の7番では、1Wが大きく左に曲がってボギー。「きょう1日、長そうだなって。イヤなものはよぎりました。“ワケが分からない”ショットが出だして『ヤバいヤバイ』と確かになったので」と振り返る。

大ギャラリーに胸を熱くした(撮影/村上航)

ここまで3日間、自分の中で根拠を持って、パー3を除く14ホールで握り続けた1W。その信念を曲げて刻みたくなる葛藤が生まれた。「自分の中で多少なりとも闘いがあって。でも、自分の力を信じてやることができた」。2日目には右にOBを打った後半11番で放った1Wショットは、全てを乗り越えた価値ある一打だった。「きのうまでのことがあって、今日いろいろあって。いろんなことを消して、あのショットを打てた。よく戻ってきたな、と」

左エッジからわずか4ydとシビアなピンを果敢に攻め込んで獲った14番(パー3)から再加速。16番も獲り、最終18番(パー5)でイーグルなら追いつける状況だった。残り205ydでピンは左奥。つま先下がり&左足下がりのライに対して素直に打つならフェードが定石だが、6Iでドローを打ちにいった。

「フェードが一番リスクはないけど、右のカラーに流れていく感じになると思って。ピンの右5mくらいのところからイーグルパットを打ちたい。そういう欲がありました」。ダフッた当たりは花道に落ち、3打目のアプローチもショート。パーでの締めくくりに唇をかんだ。

日本オープンで初めて4日間60台を並べた(撮影/村上航)

日本オープンでは2008、09年と2年連続2位となって以来の2位フィニッシュ。フィールド唯一の4日間60台は、13度目の出場にして自身初でもあった。「今日が一番バタバタしたけど、スコアは良かった。4日間を通して浮き沈みがあるというよりは、だいたい毎日同じようなゴルフができていた。これからの舞台、試合に、どんどん生かしていきたい気持ちでいっぱいですね」。赤く腫れた目で、最後は晴れやかに言った。(大阪府茨木市/亀山泰宏)

© 株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン