今春に砺波市に移り住んだガラス作家の小宮崇さん(38)が10月から同市庄川町金屋で設けた工房で本格的に制作を始めた。ガラスの魅力に取りつかれ、十数年の修業を経て、砺波への移住を機に、念願だった独立を果たした。「暮らしが豊かになるガラス作品を生み出したい」。木の文化が息づく新天地の庄川で新進気鋭の作家が新たな挑戦を始めた。
埼玉県吉見町出身の小宮さんは美術の教師を目指して進学した大学の授業でガラスに巡り会った。素材の魅力に引かれたガラスの造形の難しさから、もっと勉強をしたくなり、「やればやるほどガラスにはまった」という。
大学を卒業後、東京の離島・新島村で約8年間、ガラス体験工房のスタッフとして働いた。2017年に富山市に移住、富山ガラス工房にスタッフとして働きながら作品を作り続けた。
子どもが今春に小学校に入学するのを機に、県内で家を探していたところ、砺波市の空き家バンクで希望に合致する物件が見つかり、移住を決めた。
不透明な社会、経済情勢の中で、独立して生計を立てることに迷いや不安がなかったわけではない。新島村の同じガラス体験工房で知り合った妻の夏帆さん(38)の後押しもあり、「前を向き、勇気を出した」と独立を決断した。
自宅に隣接する建物に「小宮硝子制作所」を設立し、木造2階建ての1階部分を改装して工房を設けた。ガラスを約1200度で溶かす「溶解炉」などの設備を導入して今月から本格的に制作を開始した。
小宮さんは普段使いのガラスを中心にオーナメントなどを手掛ける。柔らかい風合いで包み込むような作風が特徴のブランド「白いうつわ」シリーズなどを全国に卸販売している。新天地ではオリジナルの色彩を生み出そうと試行錯誤を重ねている。
小宮さんは「皆さんの生活が豊かになり、そこにあるだけで心が和み、癒やされる作品を生み出したい」と意気込みを語った。