ガザ:暴力の即時停止を──「無条件の人道性を取り戻さなければならない」

水と電気が完全に止められた後、給水トラックに並ぶガザの人びと=2023年10月12日 Ⓒ MSF

衝突の激化に伴い、パレスチナ・ガザ地区の人道状況が著しく悪化している。国境なき医師団(MSF)インターナショナル会長で医師のクリストス・クリストゥが、ガザの人びとが置かれた厳しい状況を伝え、暴力の即時停止を訴える。

ガザにおける人道性の回復と暴力の即時停止を

MSFインターナショナル会長で医師のクリストス・クリストゥ © MSF

民間人の大量殺戮は極めておぞましいことであり、あらゆる言葉で非難されなければなりません。この10日間、恐ろしい暴力が繰り返されています。 イスラエルでは、何千人もの男性や女性、子どもたちが殺されています。 パレスチナでは、何千人もの男性や女性、子どもたちが殺されています。

現在のガザの状況は壊滅的です。病院や診療所は対応が追い付かず、ほとんど機能していません。電気も医療物資も不足しています。アル・シファ病院の外科医は、鎮痛剤なしで手術をしているのです。私自身も外科医ですが、これは想像を絶する状況です。
病院や診療所が攻撃されています。また、数時間以内に退避せよという要求を受け、不可能といっていい決断を迫られる病院もあります。重症患者を含め、患者は移動しても、その場に残っても、命を危険にさらすことになります。

ガザではいま、爆撃が執拗に続いています。安全な場所を求めて移動せざるを得ない人びとが、その途中に殺されています。

アル・シファ病院に運び込まれる負傷者=2023年10月16日 Ⓒ Ali Jadallah/Anadolu via AFP

人びとは閉じ込められ、逃げることもできず、安全な場所はどこにもありません。水、食料、安全なシェルター、医薬品など、必要不可欠なものが奪われています。

これは想像を絶する、非人道的な状況です。 ガザでは、基本的な人道性を回復する必要があります。 無差別爆撃は止めなければなりません。現在ガザの人びとに行われている、はなはだしい「集団的懲罰」を終わらせなければならないのです。 ガザにいる人びとには、保護された空間と、安全かつ妨害を受けることなくそこに到達する方法が必要です。境界を越えてエジプトに入ろうとする人びとには、将来に戻ってくるという権利も含めて越境を許可し、適切かつ人道的に支援すべきです。人びとはまた、清潔な水、安定した電気、食料や医療へのアクセスも必要としています。 エジプトへのラファ検問所を開放し、医療品や必要物資をガザに送れるようにしなければなりません。 MSFだけでなくやガザのすべての医療スタッフが活動するためには、基本的な安全の保証が必要です。 驚くほど多くのニーズがあるにもかかわらず、広範囲に及ぶ爆撃が続き物資の搬入が不可能なため、私たちはほとんどの活動を中断せざるを得ない状況になっています。ガザ内外のチームは、できる限りの対応をしています。

医療・人道援助団体として、MSFはもっと多くのことを行いたい。しかし今、それができなくなっているのです。

© 特定非営利活動法人国境なき医師団日本