稲刈りを前に鹿との戦い 電気柵も飛び越えて侵入 休耕地の再生に取り組む「ふるさと楽舎」 広島・安佐北区

広島市の山間の集落で休耕地の再生にあたっているグループが、先日、稲刈りをしました。グループの名前は「ふるさと楽舎」。去年、地域づくりのモデルとして表彰されたのですが、その活動は農作物を荒らすシカとの戦いでした。

広島市 安佐北区 大林町 桧山地区―。9年前の広島土砂災害の被災地です。先週末、その一角が若者たちでにぎわいました。

「では、やってみましょう!」「お願いしまーす」

グループ「ふるさと楽舎」の稲刈りです。

参加した大学生
― どうですか?
「楽しいです」
「あまりうまく切れなくて…」

区役所のシニア職員
「腰を落としすぎない。もっと楽だ、その方が」

参加者は、子どもから大人までおよそ40人…。農機具メーカーもコンバインを出して、ボランティアで収穫を手伝いました。

参加した大学生
「ここに来ると元気が出ます、積極的な休養」

参加した地元住民
「若い人たちと一緒にできるっていうのが魅力だと思います。未来につながる農業っていう感じがしますね」

参加者もほとんどがボランティア…。正式メンバーは3人です。

ふるさと楽舎 プロジェクトリーダー 馬場田真一 さん
「いい感じの出来上がりじゃないんかと思います。獣も来んかったですし、いやあ、ようやくここまで」

獣とは、この骨…、シカのことです。

馬場田真一 さん
「おまえら、入って来たら、こうなるぞという…」

プロジェクトリーダーの 馬場田真一 さんにとって、ことしもシカとの戦いでした。馬場田さんは、広島市内で働きながら5年前から仲間とともにここの休耕地を再生し、コメなどを作っています。

2年前からは収穫したコメで地域の酒「大林千年」を造り、活動費の一部を賄っています。一連の活動は去年、地域づくりのモデルとして国から表彰されました。

取り組みの最大の敵が、シカです。特に花畑は去年、植えたばかりの苗をほとんど食べられました。ことしは電気柵の段数を増やし、守りを強化しました。

馬場田真一 さん
「シカが入ろうとしたときにシカのボディに、例えば鼻だとか、またごうとしたときに足に当たったときに電気が流れて痛い思いをする」

野菜の苗は金属製の鉄柵で囲み、2重の守りにしました。ところが…

馬場田真一 さん
「こんな感じで食べられた。(芽の上を)チョキチョキって食われちゃう」

― これ、ヒマワリですか?
「ヒマワリですね。ちょっと前に食べられたかな。これなんか根こそぎいっちゃっているので、このまま枯れ落ちると思います。ガックリ。ガックリです」

柵を設置してまもなくシカが侵入、苗は全滅でした。畑のセンサーカメラにその様子が写っていました。

柵が壊れていないことから、シカは柵を飛び越えて侵入したようです。被害は地区全体で起きています。

地区の農家
「うちも畑にシカが来て、いけんけえ。ナスビでもきれいに食べてしもうて」

馬場田真一 さん
「飛び越えて、飛び越えて中に入っている」

地区の農家
「すごい飛ぶけえね」

田植え直後の苗が食べられる被害も相次ぎました。畑の周りの耕作放棄地はシカのすみ家です。馬場田さんは来年に向け、できるだけ耕作放棄地の草を刈って、シカが近寄らない環境を作る考えです。

幸い、ふるさと楽舎の田んぼは被害を受けませんでした。

稲刈りには今回、初めて地元の中学校から5人の生徒が参加しました。学校からの呼びかけに自分から手を挙げたそうです。

地元の三入中学校の生徒たち
「楽しかった?」
「楽しい。刈るとき、取れた(ポーズ)みたいな」

地元の中等教育学校からは放送部の高校生が取材に来ました。このあと、酒造りまで取材して番組にする計画です。

地元の広島市立中等教育学校 放送部の生徒
「大林でこういうことできるんだという興味を持つきっかけになるかなと思います」

コメの出来はどうだったのか? 馬場田さんが収穫したもみをチェックします。

ふるさと楽舎 プロジェクトリーダー 馬場田真一 さん
「ふっくらしている気はします。去年より粒は大きいかもしれない。過去一かなとは今のところ、思っています。6年目、過去一番の出来かな」

収量は目標には及ばなかったものの、酒を仕込むには十分でした。コメは蔵元に搬入され、ことしも地域おこしの酒づくりが始まります。

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