社説:中国の一帯一路 軌道修正は避けられぬ

 中国が進めてきた巨大経済圏構想「一帯一路」が転機を迎えている。

 習近平国家主席の提唱から10年になるのに合わせ、一帯一路に関する国際会議が北京で開かれた。

 習氏はインフラ投資や貿易の拡大などの成果を自賛する一方、環境分野なども重視した「質の高い発展」を目指すとした。

 規模から質へと軌道修正を掲げざるをえないのは、一帯一路が中国の権益拡大ばかりに寄与している、という批判があるからだ。

 一帯一路は古代シルクロードを念頭に、中国と欧州、東南アジア、中東を鉄道や高速道、海路で結び、経済的な一体化をすすめる構想である。

 当初は多くの国が賛意を示していた。2017年には日本の安倍晋三首相(当時)も「潜在的な力を持っている」と評価していた。

 実際、潤沢な資金によって一部の途上国で港湾や鉄道などのインフラ整備に貢献してはいる。

 しかし、負の側面が目立ち、求心力に陰りが見えるのも事実だ。

 問題なのは、途上国を借金漬けにして支配を強める「債務のわな」である。

 スリランカはインフラ整備費の借金を返済できず、南部の港湾の権益を99年間、中国に譲ることを余儀なくされた。ラオスも鉄道建設で大型投資を受けたが、債務が膨らみ通貨安に苦しむ。

 会議参加国は4年前の前回より減少し、先進7カ国(G7)で唯一参加しているイタリアも撤退方針を中国に伝えたとされる。

 中国は一帯一路を「互恵」の精神に基づくとしてきた。ならば、相手国との融資条件の透明化や負担軽減に取り組むべきだろう。

 対外投融資の増加が中国経済に影響を与えていることも見逃せない。

 不動産不況などで国内の景気悪化が長期化し、大盤振る舞いを続ける余裕がなくなっている。

 今回の会議にはロシアのプーチン大統領が招かれ、連携強化をアピールした。経済制裁下のロシアを一層抱き込み、米欧主導の国際秩序への対抗軸とする狙いだろうが、ウクライナ侵攻を支える中ロ連携は国際的な孤立を深めるだけだ。

 一方、米国はインドや中東、欧州をつなぐ経済回廊構想を打ち出した。中国を牽制する狙いが透けて見える。国際経済のブロック化につながってはなるまい。

 米中と深くつながる日本は双方に働きかけ、幅広い連携を先導するべきだ。

© 株式会社京都新聞社