「“白いモビルスーツ”を駆使して」分身ロボットがカフェの店員に 難病や重い障害のため外出が難しい人たちが “パイロット” になり遠隔操作

ロボットが新たな雇用を生みだすことができるのでしょうか? 広島市のカフェで、分身ロボットを活用して「離れた場所」で働く実証実験が始まりました。

分身ロボットが登場したのは、アンデルセンカフェひろぎんホールディングス本社ビル店です。実証実験では、北海道から沖縄まで全国から41人の「パイロット」と呼ばれる難病や重い障害のため外出が難しい人たちが、「分身ロボット」を遠隔操作し、サービスを提供します。

オープンしたカフェでは、さっそく分身ロボットが接客をしていました。

来店客たち
「体が動かなくても仕事ができるステージがどんどん広がっていければいいなと感じました」

「家からオンラインで授業を受けたりするときに(こういうツールが)チャンスかなと体験をしに来た」

一般オープンを前に19日、メディア公開が行われました。

オリィ研究所 吉藤オリィ 所長
「体を動かすことができなくなってなお、社会で活躍することはできるとわたしたちは思っています。心が自由であれば、どこへでも行けて何でもできる」

吉藤所長は、分身ロボットがそれを実現させてくれるとあいさつしました。

取材記者が体験しました。全長およそ120センチ。分身ロボット「OriHime-D(オリヒメディー)が、静々と注文したアイスコーヒーを運んできてくれました。

公認OriHimeパイロット まさこ さん
「きょうは大阪から操縦しております」

そして、席でドリンクの注文や分身ロボットカフェについて説明をしてくれたのは、千葉県在住の こや さん(46)です。分身ロボットを操って4年目を迎えました。

公認OriHimeパイロット こや さん
「ぼくは(10年前に)外出困難な状態になってから、人と出会うことが減ったときに非常に人生の先細りと受け止めた。人と出会えないことは、言葉を忘れていくというか。コミュニケーションの取り方を忘れてしまう中で、この分身ロボットカフェをやることで、みなさんと話をするときに非常に会話をする広がりやすそ野が広がって。非常にありがたく、楽しく人生を過ごせる。先細っていたものが、広がっていくところにつながる、そんな体験をしています」

インタビューは30分におよび、最後はロボット談義に花が咲きました。

公認OriHimeパイロット こや さん
「ガンダムですね、ガンダム世代」

― アムロと同じようにパイロットとしてご活躍ですね?
「この白いモビルスーツを駆使して『ぼくが一番うまく操縦できる』と言いながら、やらしていただいております」

広島でのプロジェクトでは、就労体験プログラムとして県内の特別支援学校に通う生徒7人も参加します。デモンストレーションでは、県教育委員会の 平川理恵 教育長が、娘を自宅で介護をしながらパイロットと務める女性の接客を体験しました。

広島県 平川理恵 教育長
「働きたいけど、誰かを介護しないといけないから働けないとか。この方、(札幌からのリモート操作で)広島県庁で受け付けをされているそうなんです。働く機会をこのロボットで可能になるのはすごくすてきな世の中だと思いました」

実証実験に参加する地元企業の反応は…

広島銀行 廣江裕治 常務
「銀行でも家で仕事をするのはありえないと思っていたのが、コロナ禍の中で当たり前にできるような時代になった。当然、障害者の方、家から出れないような方もこういった形で仕事ができるのではないかと思う」

オリィ研究所 吉藤オリィ 所長
「(分身ロボットという)働き方を通じて、働くことができないと思う人も、誰かの役に立てることを実感し、社会の中の一員として実感できるような未来を作りたい」

世界遺産がある広島では、分身ロボットを活用した観光分野での新しい働き方の開拓にもチャレンジしていきたいとしています。

「分身ロボットカフェDAWNver.β in Hirosima」
キャラバンカフェは、来月5日まで開かれます。

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