六甲山の現代アート芸術祭、宇都宮市出身の五月女さんがグランプリ 食と生 テーマに彫刻作品

六甲山ビジターセンターで展示されている受賞作「食事の風景」

 現代アートの芸術祭「六甲ミーツ・アート芸術散歩 2023 beyond」で、宇都宮市出身の五月女(そうとめ)かおるさんの彫刻「食事の風景」が公募大賞のグランプリを受賞した。五月女さんは愛知県立芸術大大学院在学中。同芸術祭は神戸市・六甲山上を会場に11月23日まで開かれており、五月女さんの作品は、六甲山ビジターセンターに展示されている。

 2010年から毎年開催してきた同芸術祭は今回が14回目。これまで延べ470組を超えるアーティストが参加している。招待アーティストのほか、公募選出の作品も展示、ことしは過去最多304作品の応募があった。書類選考による1次審査で選出された17組が作品プランを実際に会場で制作。2次審査で公募大賞が決まった。

 グランプリに選ばれた五月女さんの作品は、家畜の形に造形した金網を鉄のフレームの中にはめ込んだ。「食材が口に入るまでの過程が目に入らない食事は、生命の存在を希薄にし、自分が何を食べて生きているのか考えなくなる」という恐怖がコンセプト。フェンスを模すことで仮設的な目隠し、あるいは捕食する側とされる側の仮設の境界としての役割を持たせた。

 審査員からは、ワイヤだけで牛の姿が織り込まれ、繊細でありながらしっかりとした表現になっている点が評価され、「造形力、コンセプトの明快さ」がグランプリにつながったと講評された。兵庫県神戸県民センター長賞にも選ばれた。

 「牛のイメージの一つは栃木で見ていた風景」と話す五月女さん。彫刻とそれを取り巻く空間に関心があり、「技術面でもできることを増やしたい」と次の作品に取り組んでいる。

 1996年生まれ。秋田公立美術大卒業。2023年「KEAT 小砂環境芸術祭」観光協会長賞受賞。

表彰式であいさつする五月女さん

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