寝たきりなどで外出が難しい人の家や福祉施設に出向き、髪をカットする訪問美容師の仕事を今年4月から始めた。奥坂光稀さん(33)は、以前は高校教諭だったが、認知症を発症して寝たきりになった祖母の介護をきっかけにこの道を選んだ。「身なりを整え、自分が好きな自分でいることは、元気で自分らしくいきることにつながる」と力を込める。
「おばあちゃん子」だったため、自宅が好きな祖母に住み慣れた環境で過ごしてもらおうと、昨年7月から同居して介護していた。持っていた美容師の資格を生かして祖母の髪を切ったとき、別人のように生き生きとする姿に驚いた。
同時に「認知症が進行すると美容院に行くのは難しく、車いすだと介護タクシーなど費用がかかる。困っている人は結構いるのでは」と考えた。カットを学び直し、介護退職という形で教諭を辞めて訪問美容師の世界に飛び込んだ。
訪問先では介護している家族とのコミュニケーションを大切にしている。「排せつなど大変なことがある。その気持ちや大変さをどのように乗り越えたかを経験から分かるのが強み」と話す。
「髪を切りに行けないと困っていた人が喜んでくれるのがうれしい」とやりがいを感じている。訪問美容の知名度はまだ低いが、「潜在的な需要はあるはず」と語る。
自らの介護は母や叔母と協力しているが、介護する人と受ける人が社会的に孤立するケースは少なくない。引きこもりなどを含め、孤立している人を、カットを通じて行政や福祉につなげることができないかと模索している。近江八幡市在住。
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訪問美容ではカット以外にも、カラーやシャンプー、パーマ、マニキュアなど多彩なメニューがある。また、ベッドに寝たままでもシャンプーやカラーができる。事務所は高島市に構え、依頼があれば県内全域のどこへでも訪問する。問い合わせは髪人滋賀湖西店080(3844)5712。