社説:給食費の無償化 実現に向けて幅広い議論を

 子ども政策の重要な柱として、実現へとつなげたい。

 全国の小中学校で給食費の一律無償化を検討するため、文部科学省が実態調査を始めた。

 政府は6月にまとめた「こども未来戦略方針」で、「無償化を実施する自治体での実態や成果・課題の調査を行う」と明記した。結果は1年以内に公表するという。課題を洗い出し、前向きに進めてほしい。

 学校給食費の無償化は、全国の自治体で広がりつつある。

 民間の教育行財政研究所によると、4月までに全国323の自治体が実施。京都府では5町村、滋賀県では2市町だった。5年前の文科省調査は76自治体で、4倍以上増えた。

 22年度から、新型コロナウイルス感染症対策で国の「地方創生臨時交付金」を給食関連に使えることも追い風となった。本年度はさらに増える見込みだ。

 給食費は、学校給食法で保護者の負担となっている。21年の公立小は平均月額4477円、中学が5121円だった。

 経済的困窮や虐待などさまざまな事情で、十分に食事がとれず、栄養が偏る児童生徒もいる。コロナによる一斉休校では、「心身を育む栄養摂取」を保障する給食の果たす役割が再認識された。物価高も響いて家庭の負担は増しており、無償化を求める声は大きい。

 22日投開票だった亀岡市長選をはじめ、首長選の論点になることも多い。まちに子育て世帯を呼び込む支援策の一つとして注目されているようだ。

 京都市で無償化を実施すると、年約46億円かかるとも試算される。厳しい財政状況などから、検討に至っていない自治体が多いのも実情である。

 コロナ臨時交付金は一時的な財源のため、継続できない自治体も出てくるとみられる。

 東京都では多くの区が実施する無償化の対象から、都立の特別支援学校が外れている。

 未来戦略方針の中では、児童手当の拡充など現金給付も盛り込まれたが、1兆円を超える費用が見込まれ、効果が限られるとの指摘もある。

 一方、給食費無償化は子どもに直接届く現物給付だ。大切な学びの場としての給食は、地域の食材を知る機会にもなる。苦手な食材も友達と囲みながらであれば食べることができる子どももいる。

 地域で格差が生じぬよう、義務教育の期間は給食費を国が一律に無償化する意義は大きい。

 ただ中学校では給食の実施率が約9割である。京都市は現在、全員制の実施に向けて検討を進めている。牛乳のみ、おかずと牛乳のみの市町村もある。国が給食費を無償化すれば、自治体の給食実施を後押しすることにもなろう。

 子どもたちに安定したおいしい給食を届けるため、幅広い議論が必要だ。

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