故郷に錦、友禅天井画 90歳、鎌倉の作家坂井さん 宝達志水・菩提寺の本堂彩る

手掛けた友禅の天井画を見上げる坂井さん(左)と長女の三智子さん=宝達志水町麦生の妙法輪寺

  ●「感謝しかない」

 宝達志水町麦生(むぎう)の日蓮宗妙法輪寺で330年ぶりに本堂が建て替えられ、同町出身の友禅作家坂井教人(のりひと)さん(90)=神奈川県鎌倉市=の手掛けた友禅の天井画が華やかに内陣を彩った。実家の菩提(ぼだい)寺である同寺と、15歳で離れたふるさとのために精魂込めた染め物の天井画。坂井さんは22日、落慶法要に参列し「こんな大きな仕事ができ、作家冥利(みょうり)に尽きる。感謝しかない」と手を合わせた。

 作品が使われたのは本尊を安置する内陣の格(ごう)天井。60センチ四方の華紋2種類が交互に80枚並ぶ。紬地(つむぎじ)に金糸を織り込んだ特別な生地が用いられており、坂井さんが長女の三智子さん(51)とともに染め上げた。

 頭上に渋い光を放つさまは壮観で、法要でも檀信徒のため息を誘った。大森教裕住職は「末代にまで残る素晴らしいものをいただいた」と感謝を口にした。

 旧押水町上田出(うわだで)に生まれた坂井さんは、日本画の修業のため1949(昭和24)年に上京し、63(同38)年に友禅作家として独立した。日本工芸会正会員となり、長く活動を続けている。

 数年前、菩提寺の本堂が建て替えられると知った坂井さんは、支えてくれたふるさとへの感謝を込め、染め物の天井画の制作を申し出た。

 妙法輪寺は700年ほどの歴史があり、亡き父からは「寺を頼むぞ」と言われ続けていたという。卒寿になって「ようやくその願いに応えることができた」と坂井さん。親戚や旧友らと天井を見上げ、晴れやかな表情を浮かべた。

 妙法輪寺では本堂と合わせて客殿も建て替えられ、約40人の子どもたちが華やかな稚児行列を繰り広げて完成を祝った。

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