付近住民「怖い、不安」 10月25日佐世保で原潜防災訓練 不参加続く米軍に「せめて見学を」

原子力潜水艦が接岸する赤崎岸壁。近くには住宅などが並んでいる=佐世保市

 佐世保市の赤崎岸壁に停泊する米海軍の原子力潜水艦で放射線漏れ事故が起きたと想定した防災訓練が25日、佐世保港などで行われる。国内には米原潜の寄港地が3カ所あるが、接岸場所から半径500メートル内に住宅があるのは佐世保だけ。付近住民には「怖い、不安もある」などと複雑な心境を吐露する人もいる。訓練開始以来、不参加が続く米軍にも、参加を求める声は根強い。
 「事故は起こらないと信じているけれど、こればかりは分からないから」。赤崎町の80代女性は静かに口を開いた。病気で2~3年は訓練に参加できず、日中は家に1人。事故が起こった時「移動の足はなく、逃げられない。誰か助けが来てくれたら良いけれど」。
 岸壁を見下ろす場所にある、ケアハウスあかりさき。「原潜が来ていたら、上から見えるんですよ」。施設長の藤井陽子さん(56)は岸壁に目を向けた。接岸するようになったのは開所後からだ。
 事故が発生すれば利用者の避難を進めなければならないが「放射線は目に見えない」。避難している間に「(施設まで放射線が)来てしまったらどうすれば」と不安が募るも、「考え出したら生活ができない」。
 米軍には「人ごとと思わず、せめて見学を」と求める。近くに米軍住宅もあり「もし何かあった時、米軍の家族はどうするのだろう」と気にかける。「軍ではなく家族が参加するだけでも、訓練の目的が達成されるのでは」と希望をつなぐ。ただ、疑問もある。「横須賀市の訓練には参加していると聞いた。なぜ佐世保はだめなの」
 不参加の要因の一つに「母港」と「寄港地」の違いがある。佐世保市は外務省を通して米海軍に参加を要請し続けている。宮島大典市長は10月、佐世保基地のマイケル・フォンテーン司令官と会談。司令官は、寄港地への対応は従来通りとの方針を示したという。
 一方、原子力空母の母港である横須賀市では、2007年から日米合同で防災訓練を続ける。今年2月は、停泊中の原子力空母内で、微量の放射性物質を含む水が乗組員1人の衣服に付着、軽度の被ばくをして心臓発作を併発した想定だった。
 米政府は原子力艦の安全性に関する文書「ファクト・シート」を示しているが、その内容以外で心臓発作など「『こんな可能性があるかもしれない』とつぶしていくのが大事」(横須賀市担当者)という。当事者である米軍の参加により「日本側の士気も高まり、感じ方が違う。(米軍と)顔をつきあわせて調整し、信頼関係も構築できる」と意義を強調する。

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