日本唯一の「2.5次元ミュージカル」専用劇場、神戸で本格稼働 人気漫画やゲーム原作 地域密着へ、演劇ユニット結成も 兵庫

808席を備えるアイア2.5シアター神戸=神戸市中央区北野町1(提供)

 かつて新神戸オリエンタル劇場として知られた劇場が「アイア2.5シアター神戸」(神戸市中央区北野町1)へと生まれ変わり、「2.5次元ミュージカル」をメインに上演する日本で唯一の場所へと様変わりした。長く神戸の舞台芸術をけん引してきた拠点は「関西発のエンターテインメント発信基地」として新たな客層を引きつけている。(小尾絵生)

 新神戸オリエンタル劇場は1988年に開業。コンサートや芝居など幅広い演目で市民に親しまれたが、当時の運営会社との契約満了を機に2018年末に閉場した。

 一方、「アイア-」は同年末まで東京・渋谷に専用劇場があったが、東京五輪開催用地整備のため閉場。代わりを求め、19年に現在の「アイア-」として新装オープンした。だが、新型コロナウイルス禍で「開店休業」状態に。ようやく2023年から本格的に稼働し始めた。

 2.5次元は漫画やアニメ、ゲームなどの2次元作品を舞台やミュージカルといった3次元で再現することを指す。上演作品の企画・制作を手がけるネルケプランニング(東京都)は20年間、人気少年漫画が原作のミュージカル「テニスの王子様」の制作・上演に関わり、多くのファンを獲得。芝居の新ジャンル「2.5次元ミュージカル」の開拓に大きな役割を果たした。

 これまでの上演作は同じく漫画が原作の「NARUTO-ナルト-」や、ゲームが原作のミュージカル「刀剣乱舞」など、超人気作を含む20作品以上。神戸は東京などの会場と比べ、俳優との距離が近く「より一体感が味わえる」と東京から駆け付ける長年のファンもいる。

 2.5次元では原作のキャラクターに近づけた髪形や衣装など、特に外見を重視しており、キャラや出演俳優個人に熱心なファンがつく傾向がある。無名に近かった若手俳優が出演を機に、より大きな舞台へ成長していく例も多い。「テニスの王子様」から羽ばたいた俳優には、城田優さんや伊礼彼方(いれいかなた)さんらがいる。

 課題は地元の固定客を取り込み切れていない点だ。関西事業の担当者は「遠方の方はもちろん、神戸の人にこそ親しまれる劇場にしたい」と語り、神戸の観光業との協力を模索し、リピーターを増やすコンテンツ作りにも力を入れる。「魅力的なエンタメ作品を関西、神戸で生み出し、ここから羽ばたく俳優たちを育てたい」と力を込める。

▼「セーラーボーイズ」結成 地元に密着、イベント参加

 「関西発」を目指し生まれたのが、演劇ユニット「神戸セーラーボーイズ」だ。アイア2.5シアター神戸を拠点に、地域に密着した活動にも力を入れる。

 14~18歳の10人で今年4月に結成。2、3カ月に1回の劇場公演に加え、「自分たちの存在や活動を通じて神戸を知ってほしい」と、ストリートピアノで合唱ライブをしたり、地域イベントで歌声を披露したり。図書館「こども本の森 神戸」(神戸市)では、読み聞かせ会を開いた。

 パン製造販売「イスズベーカリー」とのコラボ企画では、お気に入りのパンを「推しパン」として紹介し、一日店長を務めてPRに一役買った。また、劇場型水族館「アトア」などを訪れ、FMラジオ局「Kiss-FM KOBE」の地域情報サイトで紹介していく。

 地元出身のメンバー崎元リストさん(14)は「自分自身が神戸の魅力を再発見している。ファンの方にもこの楽しさが伝わればうれしい」と話す。同ユニットの次回公演は11月17~26日。

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