網戸に描いた加賀友禅模様 加賀の飲食店、暮らしに伝統工芸を 金沢の久恒さん手掛ける

加賀友禅を描いた網戸を制作した久恒さん=加賀市熊坂町

 加賀市熊坂町の飲食店に加賀友禅の模様が描かれた網戸が設置され、来店客から好評を得ている。手掛けたのは金沢市の友禅作家久恒俊治さん(73)で、長年温めてきたアイデアを具現化した国内初の試みとなる。久恒さんは一般住宅に加賀友禅の網戸を導入する準備を進めており、石川の伝統工芸が暮らしに息づき、県内外に広まることを期待している。

 加賀友禅の網戸があるのは食事処「浅茅(あさぢ)」で、今月1日のリニューアルオープンに合わせ、新築工事を手掛けたTAKATA建築(金沢市)が設置した。

 網戸は、久恒さんが考案したメッシュ状の合繊パネルに友禅模様を施す「紗透(しゃとう)加賀友禅」の製品で、七宝文様や色留め袖の模様などが描かれている。通気性が高く、外から屋内が見えにくい効果もある。

 久恒さんは30年ほど前から加賀友禅の模様をデータ化する試みを行ってきた。繊細で優美なデザインを細かい網目状の網戸で表現するのは難しかったが、近年の印刷技術などの発展により、網戸に加賀友禅の模様を描くことができるようになった。浅茅のオーナーやTAKATA建築統括プロデューサーの小西暢広さん(48)らの協力を得て、初めて建築物に設置した。

 加賀友禅の網戸はTAKATA建築が手掛ける住宅にも設置が可能で、今後導入を呼び掛ける。久恒さんは「加賀友禅を生活の中で身近に感じてもらえたらうれしい」と話した。

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