5年生存率、金大病院55% 膵臓がん

診療科横断で膵臓がん患者の治療方針を探るスタッフ=金大附属病院

 金大附属病院で、昨年度まで5年間の膵臓(すいぞう)がん術後生存率が55%となり、一般的な生存率20~40%を上回ったことが分かった。同病院では、外科に加え、内科や病理担当など診療科の枠を超えたスタッフが患者ごとに最も適した治療を検討しており、他の病院で「治療困難」とされた患者の命を救ったケースも。病院の総合力が欠かせないとされる膵臓がん治療の先進事例として関心を集め、他の医療機関から見学が相次いでいる。

 診療科横断で治療に当たる「ユニットカンファレンス」は2021年、蒲田敏文病院長の提案で始まった。手術を担う肝胆膵(かんたんすい)・移植外科をはじめ、内視鏡診断や化学療法を行う消化器内科や腫瘍内科、がんの画像診断を行う放射線科、腫瘍の細胞や組織を分析する病理診断科が参加し、看護師らも加わる。

 メンバーはこれまで550件を超える症例について情報を共有し、得られた知見をもとに定期的に集まって治療方法の検討を重ねている。1人の患者でも、がん診断時、化学療法中、術後など、ステージに応じて最良の治療方法を選択しているという。

  ●「完全切除」8割超

 病院によると、カンファレンスの設置により、膵臓がん根治の鍵となる「完全切除」を8割以上の患者で実現した。ある高齢男性は腫瘍により、膵臓が通常の倍近くまで大きくなっていたが、抗がん剤と細かな体調の管理によって腫瘍が小さくなり、手術が可能な状態となり、切除に至った。

 カンファレンスの一員で、肝胆膵・移植外科の八木真太郎教授によると、一つのがんを対象に各科横断型で患者の状態を検証、情報共有する試みは珍しい。

 八木教授は「金大は膵臓疾患に関わる全診療科がトップレベルで、連携することで救える命が増えていると実感している」と強調。放射線科医としてカンファレンスに加わる蒲田病院長は「膵臓がんの生存率向上は医師の使命。がん克服に総力を挙げる」と話した。

 ★膵臓がん 血糖値を調節するインスリンなどを分泌する膵臓にできるがんで、年間3万人以上が死亡する。発症リスクは60歳ごろから高くなり、近年は患者数が増加傾向にあるとされる。初期段階では自覚症状が少なく、診断された時点で進行しているケースが多い。

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