大村市長選 終盤情勢 それぞれ支持拡大を呼びかけ舌戦

稲富裕和候補(左)園田裕史候補(中)北村貴寿候補(右)

 任期満了に伴う大村市長選は29日の投開票に向け終盤戦に入った。届け出順にいずれも無所属で、3期目を目指す現職の園田裕史候補(46)、新人で前県議の北村貴寿候補(50)=自民、公明推薦=、新人で歴史研究家の稲富裕和候補(70)の3人が、それぞれ支持拡大を呼びかけ舌戦を繰り広げている。

 「不安でいっぱい。助けてください」。園田候補は放虎原地区の公民館で支持者を前に危機感をあらわにした。組織に頼らず浮動票の取り込みに力を入れる園田陣営にとって、最大の懸念は投票率の低下だ。
 約3千票差で一騎打ちを制した前回8年前の投票率は60.69%。だが、今春の市議選は48.04%と50%を割り込んだ。22日の衆院長崎4区補選では低投票率の中、自民新人が初当選。一般的に、投票率が低いと組織戦を展開する自民党、公明党に有利に働くとされる。陣営の市議は「50%を切ったら本当に厳しい」と選挙ムードの盛り上げに躍起だ。
 自民、公明の推薦を受ける北村候補。「北村有利だという話まで飛び出しているが、危ない。最後に何とか追い抜きたい」と、追い上げへの期待と票の上滑りへの危惧をにじませた。
 集会には同市区の松本洋介県議ら自民議員のほか、公明の市議も出席し団結をアピール。衆院補選の結果も「追い風になった」と手応えを語る自民関係者もいる。一方、今春の県議選で初当選した同市区の牧山大和県議がここに来て園田候補の支持を表明。革新票や無党派層がどう流れるか、票の行方を注視している。
 稲富候補は知名度不足をはね返そうと、市内各地の交差点などでつじ立ちを重ねている。松本県議の父、故・松本崇元市長と共に歴史の顕彰事業に取り組んできたとして「教育文化都市をつくっていくことは元市長の願い。その思いの継承が必要だ」と主張。「松本党」と呼ばれる後援会組織の切り崩しを図る。
 こうした稲富候補の独自の動きに対し、園田、北村両陣営は「一体どちらの票を多く削るのか」と票の動きを読みあぐねている。いずれにせよ両陣営に対する批判票が一定数流れるとみられている。
 選挙戦終盤に、ボートレース事業の収益の一部を活用する新市庁舎建設問題が急浮上。北村候補は「物価高で市民の生活に厳しさが増す中、市庁舎に100億円も払う必要があるのか」と見直しを主張。それより給食費を無償化すべきだと訴える。これに対し、園田候補は市庁舎建設は「全会一致で賛成した議会の総意」と説明。その上で「何を見直してどんな新庁舎になるのか説明がない。あまりに無責任だ」と反論する。
 稲富候補はボートの収益金を市役所の建て替えに使うことも、ソフト事業への活用も否定していない。
 選挙人名簿登録者数は7万9580人(男3万7536、女4万2044)=21日現在、市選管調べ=。

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