大反響ブラジャー誕生、ノンワイヤー前開きで“ホールド感” 定評ある埼玉の会社「島崎」、乳がん患者用に開発 医師、看護師、患者ら500人が協力 肌を締め付けず、胸の形を整える

乳がん術後用ブラジャー「ノンワイヤー前開きソフトブラ」(島崎提供)

 婦人下着製造・販売の島崎(埼玉県秩父市)は、医療機関と共同研究し、乳がんを経験した患者用ブラジャーを開発した。研究開発に2年をかけ、患者や医療従事者の意見を聞きながら試作改良を繰り返した。「苦しくないのに整えるブラを」―。当事者の切実な声をすくい上げ、細部までこだわった乳がん術後のブラジャーに反響が寄せられている。

 国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)と2021年5月から共同研究を開始。同社は敏感肌向け低刺激インナー「フリープ」を07年から販売し、機能とデザインを兼ね備えた下着には定評がある。今回は、医療の知見も踏まえた専門的な下着の研究開発に着手。乳房を摘出後、パッドなど補整具を入れて使用することを主目的としたブラジャー開発に取り組んだ。

 乳腺外科の医師と乳がん看護認定看護師、延べ500人の乳がん患者の意見を聞き取り、患者はモニターとしても協力した。開発の難点は「(乳房摘出の)術後の肌を締め付けず、一方で健康な胸のサポートやパッドがずれないようホールド感も兼ね備えてほしい」という患者たちの声だった。同社デザイナーの小池京子さん(61)は「パワーのある生地の持ち味とパターン(縫製のための型紙)のかけ合わせ、そしてフリープで培った縫製技術で相反する機能の融合を目指した」と話す。

 商品化した「ノンワイヤー前開きソフトブラ」は、胸の形を整え、パッドのずれを防ぐために、張りとパワーのあるストレッチ天竺素材を生地に採用。縫い目は表に出し、肌に当たる部分をフラットに仕上げた。アンダーバスト部分は丈を長めにして安定した着用感ながら、伸縮性のあるパワーネットを生地に挟み、締め付けを軽減した。

 デザイナーの金子芽(めい)さん(24)は「パットの出し入れがしやすいよう、挿入口は大きく伸縮性があり、飛び出しにくい構造にした」と患者の困り事に細やかに応える仕様を説明する。術後、皮下にたまる出血や浸出液を外に誘導する管(ドレーン)が当たらないよう袖ぐりも大きめに設計。放射線治療中は、正確に放射線を当てるために皮膚に油性マーカーなどで印を付けるが、色移りが目立たないネイビー色も用意した。

 山本朱実営業部長(52)は「着る人のことを考え、寄り添うものづくりが私たちの使命。市場規模ではなく、困っている人や必要としている人に届くものづくりをこれからも続けていく」と話した。

 商品価格は3630円(税込み)、同病院の売店やフリープ直販サイト(https://www.fleep-webshop.com/">www.fleep-webshop.com/)で販売している。

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