社説:外国人新制度 「定住」促す仕組みになるか

 政府の有識者会議が「外国人技能実習制度」に代わる新制度の試案を示した。

 新制度は労働力確保を前面に打ち出し、来日して同じ産業分野で原則3年間働くための在留資格となる。一つの職場で1年以上働き、日本語能力があるなどの条件をクリアすれば、同じ分野で「転籍」を認める。

 3年後には5年間の「特定技能1号」へ移行できる。さらに在留を希望する人には、在留期間の上限がない特定技能2号への道も開かれる。

 技能実習制度は国際貢献を名目にしながら、転職を認めず、賃金不払いやハラスメントなど、人権侵害の温床との批判を受けてきた。廃止は当然だ。

 今後は、同じ労働者、生活者として権利と環境が保障されるかが問われよう。

 気になるのは、新制度にも、引き続き外国人材の権利や自由を制限する要素を残していることだ。

 受け入れを「監理団体」が仲介し、働き先を指導・監督する枠組みは変わらない。

 現制度では原則転籍も認められず、失踪が相次いだ。新制度下では職場を変わることができるが、働きやすさと権利保護の観点で実効性があるか、十分な検討が必要だ。

 家族の呼び寄せは特定技能1号の期間が終わる8年後までできない。それまで単身を強要する国が、働き手にとって魅力的な環境に映るとは思えない。

 新制度では、来日時に日本語能力試験を課す。特定技能のランクアップには、より上位の日本語試験の合格が必要となる。

 一方で、現状では外国人労働者にとって地域で日本語をレベルアップする環境が整っているとは言いがたい。

 外国人労働者を対象にした日本語教育は、外国人が集住する自治体が主に担っているのが実情だ。

 有識者会議は「国の役割として日本語を学びやすくすることが大事」と指摘した。国は重く受け止め、早急に日本語習熟の体制を充実しなければならない。

 転籍制限の緩和で「地方から都市部に外国人労働者が流出する」などといった懸念が早速出ている。

 外国人を「日本人に代わる安価な労働力」と考えるなら、外国人労働者の流出は阻めまい。

 外国人と企業を仲介する監理団体が正しく機能する必要がある。

 監理団体の役員を労働者の受け入れ企業の役員が兼ねている実態が指摘されている。試案は、兼業の制限や外部弁護士による監視の強化を求めた。利益相反は不正や腐敗の温床になる。中立、独立性が不可欠だ。

 就労、生活環境の両面で労働者をつなぎ止める努力が、これまで以上に企業や地域に求められる。

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