ふるさと納税でフォント!? 京都市の返礼品、大反響で完売

京都府京都市のふるさと納税品にフォントの「ヒラギノ基本6書体」が9月に登録され、「返礼品にフォント!?」「この発想はなかった」などSNSで大反響。当初の予定数を大きく超えた申し込みがあり、急遽追加した分を含めてもほぼ完売したという。

iPhoneにも標準搭載されているヒラギノフォント(提供=SCREENグラフィックソリューションズ)

ふるさと納税は、自分が生まれた地域や思い出がある地域に「寄附」という形で貢献し、かわりにその土地ならではの物品を受け取ることができる制度のこと。返礼品といえば農作物やスイーツ、工芸品などが定番なだけに、「フォント」の返礼品はかなり異例に思える。そもそも、ヒラギノフォントと京都にどのような関連性が? 詳しく訊いてみることに。

実は京都生まれの「ヒラギノフォント」

「ヒラギノフォント」といえば、多くの広告や標識にも使用されている有名フォントなため、名前を聞いたことがある人も多いはず。実はこのフォント、京都の鴨川近くの地名「柊野」から由来していることをご存知だろうか。

フォントを開発・販売しているのは、京都市中京区が本社所在地の企業「SCREENグラフィックソリューションズ」。京都創業の企業ということで京都にまつわるフォント名を模索していたところ、地名の音の響きとフォントのイメージが合うことから「柊野(ヒラギノ)」が選ばれたんだとか。

そんな同社が「自社の製品を使い、本社所在地である京都市に何か貢献できないか」と検討し、同社の人気製品・ヒラギノフォントをふるさと納税の返礼品にする案が出て、京都市に返礼品登録の申請をしたという。

京都市内にある同社が開発した製品かつ、フォント名の由来も京都市の柊野ということで「地場産品である」と認められ、晴れて返礼品として登録された、というわけだ。

ヒラギノフォントの由来、鴨川左岸に位置する「柊野」(提供=SCREENグラフィックソリューションズ)

■ 9月に登録を開始し、すぐに完売

フォントを返礼品にする事例は京都市以外では鹿児島県の1自治体のみで、全国でもきわめて珍しい。9月に返礼品として登録されると、同社のX(旧ツイッター)での投稿をきっかけに話題となり、さまざまなメディアで取り上げられた。

10月より基準が一部厳格化されたふるさと納税は、全国的に9月末の駆け込み需要があったといい、京都市も例年に比べると多く寄付があったという。そのタイミングも手伝ってか、当初の予定数を大きく超えて申し込みがあり、急遽追加した分を含めてもほぼ完売。今後の追加分は未定だといい、市の担当者も「想定を大きく超える反響をいただきました」と驚きを隠せない様子だった。

「斬新」と話題になった京都市の返礼品・ヒラギノフォント。全国の自治体では「空き家を見守る(岐阜県七宗市)」や「お墓のお掃除サービス(岩手県大船渡市)」など、変化球な返礼品がまだまだ存在する。気になる自治体の返礼品をチェックしてみれば、意外なアイテムが登録されているかもしれない。

取材・文/つちだ四郎

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