学生つなぐ、よりどころ 東京「やまがた育英会」の寮

「やまがた育英会」の駒込学生会館で開かれた寮祭で演奏を披露する寮生たち=東京

 「やまがた育英会」の東京都内にある学生寮(学生会館)が、首都圏で学ぶ本県出身の学生を支え続けている。29日には駒込学生会館で寮祭が開催され、鹿児島など他県の学生寮の寮生も初めて招待した。旧荘内館として歩みだして約130年、山形県育英会の寮が建設されて約70年、双方の運営組織が合併して15年。時代は変われど、学生の交流の場として変わらぬ役割を果たしている。

 寮祭は11組が出演する、かつてない規模の大音楽祭で幕開けした。東京音大などで学ぶプロの卵の寮生や、駒込学生会館周辺の住民による和太鼓グループ、11人編成のバンドなどが計30曲を披露した。会場には卒寮生や保護者らも詰めかけ、レベルの高い演奏に大きな拍手を送った。

 今回は初めて、鹿児島、福井、佐賀、奈良の各県の学生寮の寮生を招いた。米沢牛をぜいたくに使った芋煮会や、外の広場でのたき火を囲んだ懇親会が続き、交流の輪を広げた。

 旧荘内館は1890(明治23)年に共同自炊寮としてスタートした。96年には本郷元町の借家で定員12人の寮を開き、名称を荘内館とした。自身も卒寮生で、寮監として運営を支える和田豊さん(79)は「当時は郷土をけん引する人材を育てるための場だったのだろう」と分析する。

 1956(昭和31)年に県育英会の男子寮が建てられ、女子寮も増設されていった。2008年には運営組織を統合して「やまがた育英会」とし、卒寮生は2千人を超える。現在は、駒込学生会館(男子寮54人、女子寮50人)、板橋学生会館(男女30人)を運営。全室個室とプライベート空間を確保しつつ、山手線沿い約42キロを徒歩で1周するイベントなど交流の機会も豊富だ。

 和田さんは「この年齢になっても一生付き合える仲間ができる場。学閥や仕事とは異なるつながりを持てる」と話す。この日まで1年間寮長を務めた専修大商学部3年、鈴木健人さん(21)=遊佐町出身=は「同じ県内でも地域が違えば文化も違い、刺激を受けられる。ここにはたくさんの人に会い、いろいろな場所に出かけられる環境が整っている。多様なつながりができるのが楽しい」と充実感をにじませた。

 ◆メモ やまがた育英会は都内2カ所の学生寮の新年度入寮生を募集している。寮費は駒込学生会館が朝夕2食付きで月6万円(女性は6万5000円)、板橋学生会館は自炊で月3万5000円。推薦入試やAO入試の合格者が対象の前期募集は12月22日まで、一般入試などが対象の後期募集は12月27日~来年3月7日に申し込む。いずれも募集人数は5~8人。詳細は同育英会のホームページで紹介している。

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