専門家に聞く…袴田さん再審 初公判で見えたポイントは?

(袴田ひで子さん)

「1966年11月15日、静岡地裁の初公判で弟・巌は無罪を主張しました」

高校生ら約60人の前で、初公判で話した罪状認否を読み上げる姉、ひで子さん。初公判から2日後、都内で袴田さんの再審をテーマにした研修会がおこなわれ、ひで子さんが初公判を振り返りました。

(袴田ひで子さん)

「裁判なんてそんなものかと思った。初めて裁判に出たが、緊張して聞いていようと思っても(検察官が)同じことを言い、緊張が欠けた」

1966年、旧清水市で一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さん。事件から57年でようやく再審開始が確定し、先週、静岡地裁で初公判が開かれました。

袴田さんは長年、拘置所に収容されていた影響で十分に会話ができないことから、出廷の免除が認められたため初公判は欠席。代わりに、補佐人である姉、ひで子さんが罪状認否を行い「弟・巌に代わりまして無実を主張いたします」「巌に真の自由をお与えくださいますようお願い申し上げます」と述べました。

検察側は冒頭陳述で、死刑が確定した裁判の証拠をもとに「犯人はみそ工場関係者の袴田さんで、犯行着衣はみそタンクに隠した」などと主張し、有罪を立証する方針を示しました。

一方、弁護側は冒頭陳述で、事件は強盗殺人ではなく、犯人の恨みによる殺人で、複数人による犯行と指摘し、袴田さんの無罪を主張したうえで「捜査機関が事件の真相をゆがめ、次々と証拠のねつ造を続けてきた」などと検察側を強く批判しました。

(弁護団 小川秀世 弁護士)

「今回だらだらと今までと同じような主張でこちらの疑問に答えず、漫然と立証しているという感じで憤りを感じている」

一方、静岡地検の奥田洋平次席検事は「再審決定があって3か月の検討期間をもらって捜査をした結果、有罪を立証できると判断した、現在考えている立証内容について粛々とやっていく」と話しています。

今回の初公判からみえたポイントを、元検察官の若狭弁護士に聞きました。

(元検察官 若狭 勝 弁護士)

「今回の弁護団の冒頭陳述は、ほかにも犯人がいる、だから当然のごとく袴田さんはえん罪なんだという構図として打ち出している。検察は、今までの主張の範囲内で今回の主張を展開していると思うので、その比較において(弁護団と)格段の違いがあると思う」

若狭弁護士は、今後のポイントは検察側の“証人尋問”だと話します。

(元検察官 若狭 勝 弁護士)

「すでに出て来た人がまた同じような証言をしたとしても、蒸し返しにすぎないので、今度どういう人が証人として出てきて、どういう証言をするのかが、この事件の一番の山場になると思う」

次回の公判は11月10日に開かれる予定です。

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