捜査員50人、深夜まで役場に 町長と妻逮捕 揺れる志賀町

段ボールを抱えて志賀町役場を出る捜査員=30日午後11時37分、同町末吉

  ●「どうして」「うわさあった」

 闇に包まれた志賀町役場に石川県警の捜査員が続々と踏み込んだ。小泉勝町長(57)と地元業者が夫婦そろって逮捕された贈収賄容疑事件。30日、業務終了後の町役場には、異例とも言える50人もの捜査員が送り込まれ、夜遅くまで資料の押収が続いた。「どうしてこんなことに」と戸惑う声の一方、「うわさは前からあった」との証言も。県内24年ぶりとなる現職首長の逮捕に、町内は動揺と不安が広がった。

 業務終了時刻を1時間以上過ぎた午後6時40分、待ち構える報道陣がカメラのフラッシュを浴びせる中、約50人の捜査員が町役場に入った。約5時間後、段ボールを抱えた捜査員が続々と町役場を出た。

 1階から3階までカーテンが引かれ、外から中をうかがうことはできなかったが、企画財政課や上下水道室など関係課で幹部職員らの立ち会いの下、捜査員が書類を押収したとみられる。

 町長が警察に任意同行されたとの第1報が町側に入ったのは午前6時半ごろ。庄田義則副町長に、小泉容疑者本人から「警察が来て任意で引っ張られるので、後はよろしく」と電話があったという。警察の車両に乗り込む直前だったとみられる。

 町は午前8時半には臨時の課長会議を開いて対応を協議。事実関係の確認に追われた。庄田副町長は報道陣の問い掛けに応じ、「どういう事態か分からない」などと戸惑いの表情で話した。

  ●副町長が陳謝

 午後3時に県警が町長の逮捕を発表すると、庄田副町長は改めて報道陣の前に立ち、「現職町長の逮捕という事態を非常に重く受け止めている。町政への信頼を損ね、町民の不安感、不信感を生じさせたことに深くおわび申し上げる」と陳謝した。

 逮捕容疑については「どういう容疑か全く分かっていない。業者とのつながりうんぬんといううわさは流れていたが、それがどういう事態か一切分からない」と繰り返した。職務代理者を置くかは「町長の意向を確認して早めに検討する」とした。

 役場には朝から報道陣が集まり、普段と異なる雰囲気に職員らも困惑。「町長が近く警察に連行されるのではないかとのうわさが広まっていた」と証言する声もある中、初めて知った職員も多かった。

 町政トップの逮捕に町民からも落胆や不安の声が上がった。高浜町の70代男性は「火のないところに煙は立たん。どうしてこんなことになったのか」と残念がった。

  ●「指名もらえず困っていた」青谷工業従業員

 一方、贈賄側の青谷工業は、ひっそり静まりかえり、事務所にいた60代の女性従業員は「これから何をどうすればいいか分からず困っている」と不安げに語った。

 従業員によると、同社は家族経営で、代表取締役の青谷武と妻で取締役の勝美両容疑者を含む4人が働いていた。今回の工事は、武容疑者が入札する金額を決め、従業員は入札1、2日前に金額を知らされ、手続きをしたという。従業員は「今年は指名をもらえず困っていたが、今回ようやくもらえた」と明かし、「最近は民間の仕事も戻ってきたが、公共工事は重要な収益だった」と話した。

 青谷夫婦を知る近所の70代女性は「畑仕事を頑張っていて野菜をくれる優しい人たちだった」と話し、別の70代女性は「2人ともそんなことできる人じゃないので信じられない」と驚いた様子だった。

  ●知事「早急に事実関係明らかに」

 小泉勝志賀町長らが逮捕されたことを受け、馳浩知事は30日、「逮捕されたことは大変遺憾。捜査が進み、早急に事実関係が明らかになることを望む」とのコメントを出した。

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