最終戦は8時間の長丁場。タイトル争いの行方は!? WEC王者決定を「今年も再現させたい」と平川亮

 ここまで6ラウンドが行われてきた2023年シーズンのWEC世界耐久選手権が、いよいよフィナーレを迎える。決戦の舞台は中東、バーレーン。おなじみバーレーン・インターナショナル・サーキットだ。2台のトヨタGR010ハイブリッドでシリーズの“最高峰”ハイパーカークラスに参戦しているTOYOTA GAZOO Racing(TGR)は、同地で11月4日(土)開催される8時間レースでドライバーズタイトル獲得に挑む。

 3月にアメリカ・フロリダ州のセブリングで開幕して以来、フェラーリ499Pに土を付けられたル・マン24時間レースを除く、計5レースで勝利を収めてきたTGR。そのうちの4勝を挙げている7号車のマイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス組は、この最終戦までに118ポイントを積み重ね、ドライバー選手権のランキング2位につける。

 これを上回りランキング首位に立っているのが、僚友8号車のセバスチャン・ブエミ/平川亮/ブレンドン・ハートレー組で、その差は15ポイントだ。第2戦ポルティマオで今季唯一の優勝をマークしているこのトリオは、バーレーンで2位以上でフィニッシュすれば自力でチャンピオンを獲得することができる。

 ドライバーズタイトルは事実上、前戦の富士でマニュファクチャーライトルを確定させているトヨタチーム2台による一騎打ちとなるが、他チームのクルーにまったくチャンスがないわけではない。

 8時間レースでは獲得ポイントが通常の6時間レースの1.5倍となり、最大獲得可能ポイントが39ポイント(PP+優勝)に増えるため、トップと31ポイント差のランキング3位につけるフェラーリAFコルセの51号車(アントニオ・フォコ/ミゲル・モリーナ/ニクラス・ニールセン組)と、8号車から36ポイントのビハインドとなっている同50号車(アレッサンドロ・ピエール・グイディ/ジェームス・カラド/アントニオ・ジョビナッツィ組)にも、わずかながらハイパーカー参戦初年度での戴冠の可能性が残されている。フェラーリのドライバーがタイトルを獲得するには優勝が絶対条件だ。

 なお、バーレーンは富士と同様に、TGRにとって相性のいいコースとして知られている。トヨタは2012年からの11戦で都合8勝を挙げており、今シーズンは大会7連覇および6レース連続となるワン・ツー・フィニッシュを目指す。

■2023年WEC世界耐久選手権 ドライバー選手権ポイント早見表(第6戦富士後)

順位/得点 #8 TGR #7 TGR #51 Ferrari #50 Ferrari

1位/38点 171 156 140 135

2位/27点 160 145 129 124

3位/23点 156 141 125 120

4位/18点 151 136 120 115

5位/15点 148 133 117 112

6位/12点 145 130 114 109

7位/9点 142 127 111 106

8位/6点 139 124 108 103

9位/3点 136 121 105 100

10位/2点 135 120 104 99

11位以下/1点 134 119 103 98

リタイア/0点 133 118 102 97

PP +1 +1 +1 +1

※編集部集計

 レースウイークは11月2日(木)の日中に開始される90分間のフリープラクティス1回目(FP1)よってスタート。この日の夕刻からはナイトセッションを含むFP2が行われる。翌3日(金)は60分間のFP3のあと、決勝レースのグリッドを決定する予選が実施される予定だ。4日(土)の決勝は現地14時(日本時間20時)にスタートが切られる。

 日没後まで続く長い戦いが終わっても、まだ2023年シーズンの活動は終わりではない。8時間レースの翌5日(日)には、間髪を入れずに“WECルーキーテスト”がバーレーン・インターナショナル・サーキットで実施されるためだ。

 既報のとおりTGRは、このテストでLMP2クラスの“新星”17歳のジョシュ・ピアソンにハイパーカーのテスト機会を与える。また、北米のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権でレクサスRC F GT3を駆り、GTDプロクラスでシリーズチャンピオンを獲得したジャック・ホークスワースとベン・バーニコートのふたりも、トヨタGR010ハイブリッドを初ドライブすることになっている。

WEC最終戦バーレーン8時間レースは11月4日の14時(日本時間20時)にスタートが切られる。

■敵はフェラーリだけじゃない。「ポルシェも大きなライバルに」

●小林可夢偉(7号車トヨタGR010ハイブリッド/チーム代表兼任)

「今季はエキサイティングなシーズンで、チームの誰もが新たなハイパーカーのライバルとの戦いを楽しんできました。ただ、まだ我々にはドライバーズタイトルという、達成していない大きな目標がひとつ残されています。7号車はややポイントで後れを取っているので簡単ではありませんが、プッシュを続け、シーズン5勝目を目指します」

「もっとも重要なポイントは我々TGRの2台のうちどちらかがタイトルを勝ち取ることであり、そのために一丸となって最後まで戦います。バーレーンは我々TGRにとってこれまで好結果を残してきたサーキットで、その記録をさらに伸ばしたいと思っていますが、競争は激化しています」

「とくに前戦富士ではフェラーリだけでなくポルシェも大きなライバルになって来ていると感じたので、接戦になるでしょう。我々の準備はできていますし、レースを楽しみにしています」

●マイク・コンウェイ(7号車トヨタGR010ハイブリッド)

「バーレーンは僕にとってこれまでずっと良いサーキットで、レースも楽しいものだ。僕のトヨタでのWEC初勝利は2014年のバーレーンだったし、その後2回の世界チャンピオンを決めたのもここバーレーンだった」

「我々7号車はまだ今季のタイトル争いの可能性を残しているので、とにかく勝ちにいく。ベストを尽くし、後は8号車がどうなるか見ていくだけだ。今季は素晴らしいシーズンだったし、チャンピオンシップの結果にかかわらず、シーズン全7戦中5勝という素晴らしい結果を達成したいと思う」

●ホセ-マリア・ロペス(7号車トヨタGR010ハイブリッド)

「暑いコンディションや夜の走行もあるバーレーンで、またレースができるのが楽しみだよ。我々のGR010ハイブリッドは、これまでもここバーレーンでいつも好調だったし、チームも良い記録を重ねてきているので、僕自身は楽観視している」

「しかし、簡単にいくものではないことはいつもどおりで、ハイパーカーのライバル全車が、シーズンを少しでも好成績で終えようとしてくるので、戦いは熾烈になるだろう。このレースも、適切な車両セットアップを見出し、すべてのコンディションに合わせたタイヤマネージメントができるかが重要になるだろう」

2023年WEC第6戦富士で優勝を飾ったTOYOTA GAZOO Racingの7号車GR010ハイブリッド

●セバスチャン・ブエミ(8号車トヨタGR010ハイブリッド)

「バーレーンはシーズンを締めくくるのに最適な舞台だし、2度のタイトル決定という最高の思い出のある、僕にとって特別な場所でもあるんだ」

「ドライバーとしては、バーレーンは追い越しが可能な長いストレートと高速コーナー、そして、高低差もあり、すべての要素を持っている非常に良いコースで、いつも楽しんでいる。ナイトレースも特別だし、バーレーンでタイトル獲得のために戦うのが待ちきれないよ」

●ブレンドン・ハートレー(8号車トヨタGR010ハイブリッド)

「我々にとって非常に重要なレースであり、チームにとってシーズンを締めくくるのにふさわしいレースにしたいと思っている。前戦の日本でマニュファクチャラーズタイトルを決められたことは素晴らしかったし、これでバーレーンではドライバーズタイトル争いに集中することができる」

「チームメイトの7号車はシーズンを通してとても速く、今回も最大のライバルになることは間違いない。他のハイパーカーのライバルも非常に競争力が高く、上位争いは熾烈なものになるだろう。しかし、我々は何度もここバーレーンでタイトルを決めてきた良い思い出もあるし、この土曜の夜もそれが再現できることを願っている」

●平川亮(8号車トヨタGR010ハイブリッド)

「1年前、セバスチャン、ブレンドンと私は、ここバーレーンで世界チャンピオンを決めたので、もちろん今年もその再現をさせたいです。我々はどれだけのポイントが必要なのかわかっていますが、これだけ接近した戦いの中では簡単なことではありません」

「練習走行からの車両セットアップ作業で、とくに暑い昼間と涼しい夜というふたつの異なるコンディションでの妥協点を見出さなくてはなりません。8時間と長いレースなのでクルマのバランス、またタイヤの摩耗も大きく変わるでしょう」

「クルマがどう変わるのかを理解し、最適解を見出すとともに、ドライバーとしても、ミスのない安定した走りが求められます。シーズン最終戦をワン・ツー・フィニッシュで締めくくるために誰もがハードワークを続けていることはわかっていますし、それに応えられるよう頑張ります」

フェラーリ51号車と死闘を演じ、最後は81秒差の2位となった8号車トヨタGR010ハイブリッド WEC第4戦ル・マン24時間レース

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