「教場」のリアルな一日に密着 "幼い頃の夢をあきらめられず転職して警察官へ" 警察学校・初任科生の一日

新人警察官が現場に出る前に仕事の基礎を学ぶ警察学校。最近はドラマでも注目される「教場」には、「厳しい」「キツそう」といったイメージを持つ方も多いかもしれません。そこではいったいどんな訓練が行われているのでしょうか。訓練に励む初任科生たちの1日を通して、「教場」のリアル姿を紹介します。

幼い頃の夢をあきらめられず転職して警察官に 朝から夜まで訓練に励む

06:30 A.M. 起床

起床アナウンス:
「起床、起床、本日の点呼は6時40分からグラウンドにて通常通り行います。」

現場に出る前の新人警察官=初任科生たちはグラウンドに集まって、さっそくトレーニングです。

磯畑海成 巡査(22)は、小学生のときに交通事故に遭って対応してくれた警察官が優しくて憧れていたといいます。

磯畑海成 巡査:
― 朝イチからランニング、なかなか体にこないですか?
「けっこう腰にもくる時がありますけど、ちゃんとケアを日々しています」

磯畑巡査は、福山市の高校を卒業した後、一度は製鉄会社に就職しました。しかし、「警察官をやってみたい」という夢をあきらめられず、この4月に広島県警の門をたたきました。

準備を済ませたら、さっそく「教場」に向かいます。

09:00 A.M. 1時限目「交通」

「気を付け! 敬礼! おはようございます!」

浅野文晶 教官:
「きょうは反則切符の作成要領をまたやってもらいます。違反者に対して告知をちょっとしてもらおうかなと。磯畑、やってみる?」

浅野教官(違反者役):
「おまわりさん、遅いよ。何分かかっとん?」
磯畑巡査:
「すみません、すみません、ちょっと時間かかってしまって、すみません。本日の違反なんですけど、本日はUターン禁止の所でUターンしたということで・・・」
浅野教官(違反者役):
「・・・で、どうするんですか?」
磯畑巡査:
「はい、えっ・・・と、これ・・・、納付書がこちらになるんですけど・・・」

浅野教官:
「はい、だめー!だめー。戻ってください。積極性は買うんですけどね、全然だめですね。」

浅野文晶 教官:
「最初は当たり前なんですけど一般人なので、一般人に毛が生えたようなものなので、長い時間をかけて、ようやく心身ともに整ってきたという感じ。」

10:30 A.M. 2時限目「柔剣道」

授業が終わると、すぐに着替えて道場に向かいます。剣道を指導する山本教官は、剣道の全国大会でベスト8の経験がある実力者です。

磯畑さんは教官に一対一で稽古をつけてもらいました。

磯畑海成 巡査:
「まったく別物・・・別のモノみたいな感じがすごいですね」

山本隆裕 教官:
「やっぱりこの初任科時代というのは、ある程度、警察官の基礎を指導する場ではあるので、厳しいことも言いますし、そこは連携して、うまく学生の気持ちも考えながら、しっかり指導していければなと思います」

昼食を食べると午後からの授業に向けて準備します。

00:50 P.M. 3時限目「点検教練」

「手帳!」「(警棒)おさめ!」「警笛!」・・・教官の指示に合わせて、すばやく行動します。

指導教官:
「初っぱな合わせてほしいね、やっぱりね」
初任科生:
「はい」

02:20 P.M. 4時限目「鑑識」

指導教官:
「現金が盗られたという設定でいきます」

続いて行うのが「鑑識」の授業です。教官が被害者役となって行われます。

磯畑巡査:
「まず物の被害について教えてもらってもいいですか?」
教官(被害者役):
「物がですね、このクリアケースというか、この透明なケースの中にお金を入れてたんですけど、お金が全部なくなってるんですよ」
磯畑巡査:
「(写真を撮る)ありがとうございます」

その後、磯畑巡査は指紋採取なども行いました。

03:50 P.M. 5時限目「警備実施」

米田健太郎 記者:
「こちら出動服の上にプロテクターのようなものをつけさせてもらっています。すね・胴・腕にもつけているので、重みや圧迫感があり、慣れるまで走るのが難しそうです」

この日、最後の授業は「警備実施」です。機動隊員などが着用する出動服で行い、教官、初任科生ともに認める最も厳しい訓練の一つです。

出動服だけでなく、盾などの防具も持って、およそ1時間ひたすら走ります。

山本隆裕 教官:
「(磯畑巡査は)自分のことだけに一生懸命にならず、周りもしっかり巻き込んで、『一緒にがんばろうや』とか、班の雰囲気をよくする力は長けているとかなと」

磯畑海成 巡査:
「普通の学校以上に接する時間が多いので、とても仲良くもなりますし、とてもいいメンバーに恵まれたと思います」

― きょう一日を振り返ってどうでしたか?
「キツいとか厳しいのはもちろんなんですけど、その分、最後の警備実施のように一致団結できる場面もあって、そういうところが楽しいなと思います」

― 楽しかったですか?
「そうですね、やりきったあとがあるので、最後のやりきった感が楽しい」

放課後 自主訓練

これでゆっくり休憩・・・かと思いきや、逮捕術の大会への出場候補者は、授業や訓練が終わったあとに練習をします。それに負けじと、選ばれていない磯畑さんたちも、「何かやろう」と考えて自主的に取り組みます。

磯畑海成 巡査:
「顔上げよ! あと5本!(走り込みをする初任科生たち)」

日が暮れてもそれぞれの目標のために訓練を続けました。

磯畑海成 巡査:
「やっぱり県民の方々や地域を守っていきたい、人の役に立ちたいという気持ちがあるので、そこでがんばれているんだなと思います。犯罪を起きる前に未然に防げるような警察官になりたいです」

磯畑海成 巡査:
― こういう走った後のご飯はおいしいですよね?
「のどを通らないときもありますけど、おいしいです。みんな、たぶん、のどを通っていないと思います、水しか飲んでないと思います」

少子化でも高い人気 社会人経験者も多数 警察官の採用事情

青山高治 キャスター:
「整列や起立、礼とかもすごく速くて、そろってて、どれほどみなさんが厳しい環境の中でがんばっているのかなと思いましたけど・・・」

コメンテーター 岸圭介さん(起業家):
「私もドラマを見ていたが、それと同じように厳しい訓練をしているんだなと・・・。非常に頼もしいですね」

青山 キャスター:
「警察官になるにはこれだけ厳しい環境を乗り越えないといけないですし、少子化の中、警察官になりたいという、なり手不足はどうなっている?」

田村友里 キャスター:
「志願者はだんだんと減っては来ているが、昨年度の採用試験の倍率を見ると、一般の県職員が2.8倍であるのに対し、県警の警察官は7.1倍。およそ2.5倍の差がある。確かに少子化の影響で志願者は減ってはいるけれども、依然として人気は高い」

「そして、警察官採用試験に申し込んだ人の約3割は “社会人経験あり” という人(今年度第1回)。磯畑さんのように転職して警察官を目指す人も少なくないといいます」

「県人事委員会事務局では、『警察官の採用倍率は下がる傾向にあるが、強い意欲を持って志願する人も多く、高い水準を維持している』と話しています」

© 株式会社中国放送