「強度行動障害」の若者、全ての生活介護事業所から受け入れ断られ ともに生きる~福井・障害者たちの未来

特別支援学校高等部3年生の時、ブランコに乗って笑顔を見せる平田大悟さん=2016年、福井県福井市内(家族提供)

 特別支援学校高等部の卒業を翌年に控えた2016年の夏休み。平田大悟さん(25)=福井県福井市=は、卒業後の通所を想定し2年時から実習に通っていた同市内の生活介護事業所に、突然受け入れを断られた。

 重度の知的障害を伴う自閉症の大悟さんは、幼少期から自分より小さい子どもを突き飛ばしたり、メダカの水槽を落として割ったりと、予想が難しい行動が目立った。こうした「強度行動障害」の兆候は、思春期にさらに強くなり、高等部2年時には、校舎の2階から飛び降りて大けがを負った。

 母親の雅恵さん(60)は「『集中力がない』『十分に働けない』と言われ、受け入れを断られた。息子は体も大きく、私たち親も高齢になる中、家で抱え込んで面倒をみるのは不可能だった」。別の事業所にも掛け合ったが、だめだった。

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 生活介護事業所は、常に支援が必要な障害者に日中の活動の場を提供する。卒業直前の17年3月、「福井市内の事業所が見つかるまで」との条件付きで、あわら市の社会福祉法人「ハスの実の家」と、福井市の日中一時支援事業所「からふる」に、それぞれ平日2、3日ずつ引き受けてもらうことになった。

 一方、両親は相談員を介し、受け入れ先を探し続けた。父親の英樹さん(59)は「マンツーマンの支援が必要な人はどこの施設も受け入れたくないというのが本音」と指摘する。

 いったんは通所を受け入れてくれた事業所もあったが、利用開始からしばらくして、職員が目を離している間に大悟さんが施設2階から飛び降り、足を骨折。それから利用を拒まれた。

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 ある県内の事業者は、強度行動障害がある人の受け入れについて「現実的には無理。ほかの利用者に危険が及ぶリスク、1対1で付き添い続けるスタッフの負担、人件費という課題がある。経営が成り立たない」と打ち明ける。

 別の事業者は「サービスを受けられるかどうかは事業者と利用者との契約で決まる。自治体が利用先を決める措置制度だった頃とは違い、事業者も利用者を選べるようになった」と、制度の課題を指摘する。

 大悟さんは希望した全ての生活介護事業所に受け入れを断られた。その間、行政、支援者、事業者らによるケース会議は繰り返された。そして22年11月、大悟さんの受け入れを前提とした生活介護事業所が新たに整備され、今年4月からこの事業所に通っている。

 支援者の一人は「大悟さんは普段は無邪気で、人を笑顔にしてくれる愛されキャラ。スタッフや環境などが合っていないと、問題行動に表れてしまう」と話す。

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 福井県内で事業所から受け入れを拒否され、孤立する障害者は少なくない。誰もが自分らしく暮らせる「共生社会」のありようを考える。

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