飯豊の貸し工場に三菱鉛筆の入居内定 町整備、地元企業は立ち消え

飯豊町が「飯豊電池バレー構想」に基づき建設した貸し工場。三菱鉛筆の入居が内定した=同町添川

 飯豊町は31日、同町添川に整備した貸し工場に、筆記具製造の三菱鉛筆(東京)の入居が内定したと、町議会全員協議会で明らかにした。川西町にある山形工場の鉛筆製造の一部を移転する方針。来春の稼働が見込まれる。当初予定していた地元ベンチャー企業の入居は立ち消えとなった。

 貸し工場は「飯豊電池バレー構想」に基づき、2020年12月に建設。リチウムイオン電池関連部材を製造する「セパレータデザイン」(SD社、飯豊町)が使用予定だったが、新型コロナウイルス禍などを理由に稼働には至らず、町はSD社の了解を得て、他社の誘致を進めてきた。

 町によると、希望3社のうち2社から申請を受け、選定審査会(委員長・高橋弘之副町長)が実績や将来性などを審査し、三菱鉛筆を選んだ。年内に覚書を交わし、来年1月から使用を許可する方針。期間20年で、使用料は年3400万円。

 三菱鉛筆は、子会社を含め、川西町に鉛筆、ボールペン製造の3拠点を持つ。移転対象はJR羽前小松駅近くの直営工場で、旗艦ブランドの鉛筆と色鉛筆の一部を除き、飯豊に生産機能が移り、従業員約50人が配置転換となる。

 貸し工場は町が過疎債などを活用し、総額約26億6千万円で整備した。近年の資材高騰による工場新設コストの増大も同社が入居を希望した理由といい、後藤幸平町長は「万が一撤退されれば、多くの関連会社を抱える置賜地域で約千人の雇用に影響する可能性があった」と、地元雇用維持の必要性を説明した。

 一方、電池関連事業ではない点については、三菱鉛筆が電池部品・電極材料の研究開発も行っていることを踏まえ「今すぐではないが、先々連携していける可能性はある」と説明し、将来的な電池関連事業での活用に期待感をにじませた。

 川西町議会も同日、全員協議会を開き、町当局が同社の移転計画について説明した。

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