社説:沖縄代執行訴訟 地方自治尊重の判断を

 自治体は国のごり押しにただ従えというのか。厳しく問われる裁判といえよう。

 沖縄県名護市辺野古沖で政府が進めている米軍新基地建設を巡り、工事の設計変更を国が玉城デニー知事に代わって承認する「代執行」に向けた訴訟の第1回口頭弁論が福岡高裁で開かれ結審した。

 訴訟は、今年9月の最高裁判決で沖縄県の敗訴が確定した後も、県が承認しないことを受け国が起こした。

 地方自治法は代執行の要件として「著しく公益を害する」場合と「他に是正の方法がない」場合を規定している。

 裁判の争点は沖縄県が承認しないことが要件になるかどうかだ。

 国は、承認しなければ宜野湾市の米軍普天間飛行場が固定化する上、安全保障上も不利益だと指摘して、他に選択肢はないと主張した。

 一方、沖縄県は、承認しても普天間飛行場の危険性は続き、県民が選挙や県民投票で示した辺野古埋め立て反対の民意の尊重こそ公益だと指摘した。

 最高裁判決の確定で県の変更承認は当然、というのが国の姿勢である。これでは県民の反発は高まるばかりだろう。

 沖縄県は民意を背に、国の設計変更申請前の2019年から10回以上、首相や関係大臣に対話を要請している。最高裁敗訴後も沖縄県が設計変更を承認しないのは、国が応じようとしないからだ。

 2000年の地方分権改革で国と地方自治体は「対等」な関係となった。これに反し沖縄に対する国の振る舞いは旧態依然である。

 辺野古を巡る訴訟では、国の主張に沿う判決が続いている。今回の裁判でも、沖縄県が是非を問う新基地建設についての実質審議を避け、政府の要望に沿い即日結審とした。

 前回15年の代執行訴訟では沖縄県と国に協議を促したが、今回はそれもなかった。「辺野古が唯一の解決策」という国の主張を審理せずに、どのように代執行の要件を判断するのだろうか。司法は地方自治の尊重を十分に考慮してもらいたい。

 玉城知事は意見陳述に立ち、沖縄の基地負担の軽減に向けた米国などとの外交交渉を国が行っていないと批判した。県民の間に積み重なっている思いではないか。

 強引な手法で建設を進めても、住民の不信感に囲まれた基地が円滑に機能するとは思えない。国は対話のテーブルにつくべきだ。

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