NISA口座の金融機関変更、どんな人がするべき?

2024年から始まる新NISA制度。新しいスタートに備えて今一度自身の資産状況について整理し、考え直したい人もいるのではないでしょうか。今回は、NISA口座の金融機関変更について、どんな人が金融機関変更を検討すべきかや、変更する際の注意点について解説します。


NISA口座の金融機関変更は前年10月から可能

NISA口座は年に一度、変更したい年の前年10月1日からその年の9月末までに変更手続きが可能です。つまり、2023年10月現在では、来年2024年からのNISA口座の金融機関変更が可能となります。ただし、年内に手続きが完了しても、今年のNISA口座は変更ができない点には注意が必要です。

こんな人はNISA口座の金融機関変更の検討を

1.銀行で口座開設をしている人

普段お付き合いのある銀行でNISA口座を開設している人もいるでしょう。しかし、銀行は一般的に取扱商品が証券会社よりも少なく、個別株投資もできません。また、コスト面においても高くなりがちです。さらにWebサイトやアプリの操作性はどうしてもネット証券に劣る部分があります。

2.店舗のある証券会社で取引をしている人

店舗のある証券会社は多くの場合取引担当者が付きます。それゆえ非常にサポートも手厚く、色々な投資相談に乗ってもらうことが可能です。対面で手続きができる証券会社は、スマートフォンやパソコンの操作に自信のない人や、プロにアドバイスをもらいながら投資をしていきたい人にとって、開設メリットは大きいと言えます。一方、コスト面はどうしても人件費のかからないネット証券に劣ります。

コストが高くなりがちな銀行や店舗のある証券会社でNISA口座を開設している場合、そのコストは本当にかける必要があるものかを再考しましょう。

NISA口座にネット証券をおすすめする4つの理由

4つの観点から筆者はネット証券でのNISA口座の開設をおすすめしています。

1.コスト面

手数料は金融機関を選ぶ際に必ずチェックしましょう。つみたてNISAに限って言えば、金融機関ごとの手数料の差はありませんが、ETFなど選ぶ金融商品によっては購入時に差が出る可能性もあります。また新NISAではつみたて投資枠と成長投資枠の併用ができるようになるので、これをきっかけに個別株やアクティブファンドにも挑戦したいと思う人もいるでしょう。

わずかな料率の差が資産形成に大きな影響を与えかねないので、購入前にしっかり手数料についてもチェックしましょう。例えば、個別株については購入時手数料が0円の証券会社がある一方で、最低でも2,000円ほどかかる証券会社もあります。前述したように、人件費があまりかからないネット証券はコスト面では非常に有利なため、投資をする上では大きなアドバンテージになります。

2.商品ラインアップ

銀行と比べて、証券会社は数多くの金融商品を取り扱っています。銀行では買えない個別株も含め、様々な選択肢から選べるという点で、商品ラインアップの多さは大きなメリットです。投資信託を例に、取り扱いファンド数で比較をしてみましょう。ゆうちょ銀行は125本に対し、大和証券は605本、SBI証券は2599本(2023年10月27日時点著者調べ)と、取り扱い本数にも大きな差があります。

2024年からの新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠の両方の枠を使えるようになるため、これまでつみたてNISAで投資信託だけ購入していた方が、新NISAでステップアップとして、成長投資枠で個別株等を買いたいとなると、商品ラインアップの少ない銀行よりもネット証券を選ぶメリットが大きくなるでしょう。

3.操作性・利便性

最近ではスマートフォンで取引や残高の確認を行う投資家も増えています。ネット取引に重点を置いているネット証券は、Webサイトやアプリの操作性が良い点は魅力的だと言えるでしょう。また日経新聞を無料で読めるサービスを行っているネット証券もあります。何事も使い心地というのは大切ですよね。

4.ポイント還元率

近年、クレジットカードで投資ができる金融機関が増えています。クレジットカードで投資をすることによってカードのポイントを取得できるので、実質ポイント分も利益となります。金融機関を選ぶ上で、ポイント還元率は重視したい点です。

金融機関を変更する際に気を付けたい点

金融機関を変更する際に気を付けたい点がいくつかあります。

1.変更手続きのスケジュール

金融機関を変更したくてもすぐに変更できるわけではありません。現在NISA口座を保有している金融機関、新しく開設したい金融機関双方での手続きが必要になるため、ある程度余裕を持ったスケジュールが必要です。各証券会社とのやりとり、税務署の審査も含め1か月程度はみておきましょう。

2.その年に1円でも投資していたらその年中の変更手続きはできない

NISA口座は1つの金融機関でしか開設できません。そのため、変更前の口座で1円でも投資をしていたら、その年に金融機関を変更することができません。同じ金融機関のまま新NISAに移行する場合、多くは積立設定が引き継がれます。

現在、積立投資の設定をしている人は、翌年に向けて年内に変更手続きを済ませる、もしくは、変更前のNISA口座で取引をしないように、積立設定を止めてから金融機関変更の手続きをするようにしましょう。

3.現在のNISA口座で保有している商品は移管できない

変更前のNISA口座で保有している商品は他の金融機関に移管することができません。今年までNISA口座で投資をしていた場合、その商品は今の金融機関で保有し続けることになります。金融機関を変更すると、管理すべき金融機関が増える分、手間も増えることは理解しておきましょう。もし、新しい金融機関で保有したい場合は一度売却し、買い直す必要があります。

筆者はネット証券でNISA口座を開設することをおすすめしましたが、必ずしもすべての人にとって正解とは限りません。金融機関それぞれの特性があるので、比較検討し、ご自身のニーズに合った金融機関を選ぶようにしましょう。

金融機関変更の手続き方法とは

NISA口座を変更するには、まず現在NISA口座を開設している金融機関に連絡をし、変更手続き・必要書類の請求をしましょう。すでにNISA口座で投資をしている人は「勘定廃止通知書」、まだNISA口座で投資をしていない、もしくは投資をしているがすべてを売却して次のNISA口座を開設する予定の人は「非課税口座廃止通知書」が送られてきます。それを元に新たに開設したい金融機関でNISA口座の開設手続きを行いましょう。

新NISAに備えて早めの行動を

2024年1月から新NISAが始まることで、これから年末にかけて金融機関変更の手続きをする人は増えるでしょう。混雑すると手続きに時間を要する可能性があるので、来年からの良いスタートダッシュを切れるように早め早めに行動することをおすすめします。

現状の商品に満足していない人や、投資自体に慣れてきたのでステップアップして他の商品にもチャレンジしたい人にとって、NISA口座の金融機関変更はメリットに働くでしょう。NISA口座の金融機関変更を検討している人にとって本記事が参考になれば幸いです。

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