【香港】総領事館、輸入規制撤廃求めメディア説明会[社会]

在香港日本国総領事館が処理水放出に関するメディア向け説明会を開催。左から岡田氏、高畠氏、日引氏=10月31日(NNA撮影)

在香港日本国総領事館は10月31日、東京電力福島第1原発の処理水に関するメディア向けの説明会を実施した。処理水の海洋放出後のモニタリング結果などを解説し、香港政府が行っている日本産食品の輸入規制の即時撤廃を求めた。

説明会は原子力科学者で香港城市大学教授の日引俊詞氏が司会を務め、岡田健一総領事(大使)、経済産業省大臣官房福島復興推進グループ廃炉・汚染水・処理水特別対策監の高畠昌明氏が登壇。このほか、東京電力や日本政府各省庁の担当者らがオンラインで参加した。

岡田氏はあいさつで「世界の約200カ国・地域の中で、中国本土、香港、マカオ以外で処理水が危険だと言っているのはロシア、北朝鮮など少数の国だけだ」と指摘。香港政府に対して引き続き処理水に関する情報を提供するとともに、科学的根拠に基づき日本産食品の輸入規制をできるだけ早く解除するよう強く求めていくとした。原発の視察も提案したといい、「香港政府が望むなら歓迎する」と述べた。

説明会では専門家が処理水放出前後の海水中放射性物質のモニタリングデータなどを中心に安全性について解説した。高畠氏は多核種除去設備(ALPS)で浄化した処理水の特徴や放出までの流れを説明した上で、放出後のモニタリング結果でトリチウム濃度が基準以下であることが確認され、計画通り安全に放出が行われたことが示されたと強調した。

日引氏は国際原子力機関(IAEA)のリポートなどを基に処理水が安全とされる根拠を説明。東京電力が海洋放出に関して成熟した技術を持っていることや、放出システムの信頼性の高さなどを紹介し、「香港市民は国境を越えた影響を心配する必要はない」と述べた。

■日本食店で風評被害

質疑応答で岡田氏は、処理水の放出開始後、香港の日本料理店の売り上げが減少していることについて「関係者と定期的に意見交換を行っている。総領事館にバックアップしてほしいとの要望も受け取っている」とコメント。日本料理店の関係者が根拠のない風評被害に苦しんでいることは耐え難いと述べ、香港政府に輸入規制撤廃を求めつつ、香港市民に対してもタイムリーな情報提供を行っていきたいと話した。

このほか香港メディアからは「香港政府は輸入規制を撤廃すると思うか」「香港政府に対抗措置を取る気はあるか」などの質問が出た。

農林水産省輸出・国際局の道野英司審議官によると、8月の日本の輸出実績では、香港や中国本土向けが多いナマコの輸出額減少が目立った。ナマコの主要産地が香港で輸入禁止対象の10都県にあるためで、9月以降は影響がさらに深刻になるとみている。ただ岡田氏によると、香港向けの水産物輸出額全体では9月も微増となっているという。

香港政府は処理水の海洋放出が始まった8月24日以降、東京、福島、千葉、栃木、茨城、群馬、宮城、新潟、長野、埼玉の10都県で収穫、製造、加工、包装された水産物の輸入を禁止している。

© 株式会社NNA