地震から5カ月、珠洲焼窯再建 常盤貴子さんら応援団協力 篠原さんの工房、1月に「初窯」

再建した珠洲焼窯の前で意気込む篠原さん=珠洲市正院町平床

 5月の奥能登地震で工房が被災した珠洲焼作家の篠原敬(たかし)さん(63)=珠洲市若山町出田(すった)=の窯が1日までに、再建した。同市正院町平床に構えた工房は、高さ約2メートルの窯の前面部が倒れ、アーチ部分も崩落。県内外の有志の協力を得て約5カ月かけて作り直した窯では来年1月、作品を焼く「初窯」を行う予定で、地震発生から半年の節目を前に、創作活動がようやく再始動する。

 再建した窯は幅約2メートル、高さ約1.7メートル、奥行き約3.5メートル。約3300個のれんがを積み上げ、地震で使えなくなった窯より少し大きく作ったという。

 窯の再建作業は5月下旬に開始した。被災した珠洲焼作家を支援するため、県内外の有志74人で結成した「珠洲焼応援団2023」から協力を受けた。

 「珠洲焼ファン」として応援団長を買って出た俳優の常盤貴子さん=本紙朝刊でエッセー「月がきれいですね」を連載中=をはじめ、応援団員が工房を訪ね、作業に精を出した。参加者は篠原さんの指揮で崩れた窯を解体した後、れんがの表面に付いた耐火モルタルをはがしたり、再利用が可能なれんがを仕分けたりする作業を8月末まで続けた。

 9月以降は窯のアーチ部分の製作を篠原さんが1人で進めた。型を使ってれんがを切るなど専門的な技術が求められるだけに、篠原さんは「少しのずれも許されず、体力的にも精神的にも負担が大きかった」と振り返った。

 年内に窯の中の湿気を飛ばす「空(から)だき」を行う。初窯では篠原さんの作品だけでなく、応援団員が粘土で形作ったコップや箸置きなど約100点も焼き上げる。これらの作品は若山町出田のギャラリー舟あそびで開く展示会(北國新聞社後援)で公開する予定で、篠原さんは「いろんな人のおかげでいい窯に仕上がった。火を入れるのが楽しみだ」と表情をほころばせた。

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