コロナで株価が3分の1になったJINS、復活の兆しも気になるのは上場を控える強力なライバル

わたしが、株式投資でいちばん最初に手応えを感じたのは、ジンズHD(3046)の売買でした。株式投資をはじめてまもない2012年頃、原宿でJINSの路面店を見かけました。それまでメガネといえば、数万円レベルの高級品で、作るのにも時間がかかるちょっとお堅いイメージの商品でしたが、その原宿の店舗は、Tシャツで若者が接客する非常にカジュアルなものでした。また、フレーム+レンズで2,980円といったとてもリーズナブルな価格で、数時間でメガネができるという手軽さは、メガネ業界の常識を覆すものでした。

さらに、それまでは、視力の弱い人だけをターゲットにしていたメガネ業界ですが、JiNSは、パソコンのブルーライトから眼を守る”PCメガネ”という新しいカテゴリーメガネを提案し、視力が弱くない人までもメガネユーザーにしてしまう大革命を起こしたのです。

そんな変化を好機ととらえ、ジンズ株を購入し、1年で3倍近くの利益を取ることができました。あのときの興奮は今でもはっきりと覚えています。

その後、同様のビジネスモデルが蔓延し、メガネ業界は競争激化で、当社の業績も低迷します。またコロナ禍では、外出控えによる需要の落ち込みも逆風となり、株価は2021年4月の最高値8,890円から、今年2023年の4月には2,909円と3分の1まで下落。そんなジンズHDに、復活の兆しが見えてきました!


好調の要因

画像:ジンズ「2023年8月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

10月13日に発表された2023年8月期の①売上高は73,264(百万円)、②前年比9.5%、③営業利益4,847(百万円)、④前年比+46.2%。営業利益の予想値は4,009(百万円)でしたので、+20.9%の上振れて着地しています。

画像:ジンズ「2023年8月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

新年度である2024年8月期の①売上高は80,730(百万円)、②前年比+10.2%、③営業利益は5,500億円、④前期比+13.5%と二桁の増収増益予想です。

好調の理由は
1.行動制限解除により国内既存店の売上が力強く回復
2.有料のオプションレンズ装着率が上昇し一式単価が上昇
3.海外事業の改善

JINSは、フレームと標準クリアレンズがセットで単一価格ですが、有料で多様な機能を備えたレンズに変更することができます。そのバリエーションは非常に豊富! 調光レンズ、ブルーライトカットレンズ、くもり止めレンズ、UVダブルカットレンズといったものから、シーンに特化したドライブレンズ、ゴルフレンズ、ランニングレンズ、トレッキングレンズといったものもあります。ユニークなところでは、チークカラーレンズという、レンズの下部分に色味が入ったもので、眼鏡をかけるだけで頬の血色感をアップさせ、肌色を明るく見せるといったもの。これは、マスクでメイクが取れるといったコロナ禍でのお悩みからできたもののようです。

メガネで身体をケアする時代へ

PCメガネをいち早く提供したように、JINSはつねにメガネの可能性を追求しているように感じます。その取り組みのひとつとして「JINS MEME(ジンズミーム)」というスマホとつながるウェアラブルメガネがあります。鼻当て部分にセンサーが搭載され、Bluetoothでスマホアプリと連携。センサーが取得した情報で、カラダの状態をチェックしてくれる優れもの。

たとえば、仕事や勉強中の姿勢が悪くなっていることを教えてくれたり、1日の心の状態をリアルタイムで計測し、集中力が落ちてきたときや、強い緊張が長く続いたときは、数分で心を整えられるコンテンツを提供してくれたりします。使ってみたい!

2023年の6月には、元アップル幹部がクリエイティブ部門のトップに就任したこともあり、ますますメガネ×デジタルが強化されそうです。

強力なライバル登場?

現在、メガネ企業で上場しているのは4社のみ。時価総額(2023年10月31日時点)を見るとジンズHD979億円、パリミキHD(7455)200億円、ビジョナリーHD(9263)75億円、愛眼(9854)34億円と、ジンズHDがダントツ1位を誇ります。ところが、もしかしたら今後、強力なライバルとなるかもしれないメガネ企業が11月中旬に上場します。

「金子眼鏡」を傘下に持つ高級メガネ企業ジャパン・アイウェアHDです。金子眼鏡は、わたしも愛用しています。ここ最近、東京ではかなり店舗を見かけるようになりました。わたしは、サングラスを愛用していますが、とにかく着用感がまったくなく、メガネをかけているときに感じるストレスがありません。しかし、お値段は平均で7万円程度とジンズHDの平均一式単価9,384円の7倍以上!

おもしろいことに2社の販売戦略も真逆で、ジンズHDは認知度アップのためにテレビCMの展開を行っていますが、ジャパン・アイウェアは、売上に対する広告宣伝費率0.6%という低さで、ブランドイメージを保っています。

売上規模で比べると、ジャパン・アイウェアはジンズHDの6分の1程度ですので、ライバルとするには小粒かもしれませんが、ラグジュアリーメガネブランドとして、海外展開も積極的に掲げていますので、ウカウカしていられません。上場するということは、さらなる成長を目指して野心的に仕掛けてくるつもりでしょう。

斜陽産業と言われるメガネ業界ですが、なんだかおもしろくなってきました。今後の2社の株価の行方に注目です。

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

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