亡き友の夢、母校で個展 金沢美大旧校舎レトロ看板300枚 穴水出身・伊藤さん収集 同級生ら企画

伊藤さんの夢だった個展開催に向け、ホーロー看板の展示を進める有志=2日午前10時55分、金沢市小立野5丁目の金沢美大旧校舎

 穴水町出身の広告ディレクターで4年前に47歳で亡くなった伊藤雅克さんが収集した昭和レトロなホーロー看板が3~5日、母校の金沢美大旧校舎で展示される。伊藤さんの看板に関する本紙記事を知った同級生らが、個展開催が夢だった伊藤さんの遺志を継いだ。2日は伊藤さんが約30年にわたって集めた約300点全てが会場に運び込まれ、同級生は「故人の情熱を多くの人に感じてほしい」と話している。

 伊藤さんと金沢美大同級生で、今回の展覧会の代表発起人のCMディレクター・監督の高橋英之さん(51)=東京=は、旧校舎の取り壊し前に同窓会を開く話が持ち上がった際、伊藤さんについて報じた本紙記事を知った。伊藤さんの穴水にある実家に手紙を出し、展覧会開催に向けて看板を貸してくれないか打診し、了承を得た。

 高橋さんは学生時代、ホーロー看板を集めに伊藤さんと一緒に京都や滋賀など県内外に出掛けた。卒業後、共に東京で働くようになり、たまに伊藤さんの家を訪れると、伊藤さんは食事をする時間も惜しんで夜遅くまでホーロー看板の話をしていたという。

 「ホーロー看板の魅力が分かる話し相手がほしかったのでしょう」と高橋さん。集めた大量の看板は大事に梱包(こんぽう)され、全てを広げて見ることができなかった。高橋さんは「伊藤に見せてやりたいし、『見てくれ』とも言われている気がする」と話す。

 コレクション展(北國新聞社後援)は、金沢市小立野5丁目の金沢美大旧校舎2階3年油画演習室で開かれる。同大の新校舎への移転に伴うイベント「金沢美大引っ越しだよ!全員集合」の一環で、栄養ドリンクやビールなどおなじみの看板から、世界に3枚しかないとされるマニアックな1点などを展示する。

  ●3日から

 会場では、伊藤さんと金沢美大で同級生だったアニメ映画監督米林宏昌さんが、自転車に乗って看板を集める伊藤さんの姿を描いたポストカードが来場者に配られる。入場は無料。

 伊藤さんの姉・小泉慶子さん(54)=野々市市=は「弟の夢をかなえたいと思っていたが、どうしていいか分からなかった。皆さんの協力があり、本当に感謝しかない」と語った。

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