知っておきたい年末調整の仕組み、どのような所得控除が受けられる?

会社員なら、毎年11月に会社から年末調整の用紙が配布されます。年末調整とは一体どのような仕組みなのか知らないまま提出している人も多いのではないでしょうか?

今回は年末調整の仕組みと、年末調整で受けられる所得控除の内容について解説します。


年末調整とは?

会社員の場合、毎月の収入から所得税や住民税が差し引かれます。住民税については、前年の所得金額を基に計算された金額が差し引かれますが、所得税については、あくまでも会社が算出した概算額です。

その年の収入は、残業や休日出勤、また昇級などによって変動し、1月1日~12月31日までの間に支払われる給与で確定します。

そのため、最終的に正しい所得税額に精算しなければなりません。この精算が年末調整にあたります。概算額よりも最終的な所得税額が低い場合は還付されますし、逆に高い場合は徴収されます。

所得控除と税額控除の違い

年末調整では、所得控除や税額控除も合わせて行えます。ここでは、所得控除と税額控除の違いについて解説します。

●所得控除とは

所得控除とは、収入金額から差し引いて最終的な所得金額を求めるために利用するもので、以下の種類があります。
・雑損控除
・医療費控除
・寄付金控除
・社会保険料控除
・小規模企業共済等掛金控除
・生命保険料控除
・地震保険料控除
・障害者控除
・ひとり親控除
・勤労学生控除
・配偶者控除
・配偶者特別控除
・扶養控除
・基礎控除

このなかで、年末調整で控除できるのは、雑損控除、医療費控除、寄付金控除を除いたものです。

●税額控除とは

課税対象となる所得金額は、以下の式で求めます。

課税所得金額=収入金額-(給与所得控除+該当する所得控除)

そして、算出された課税所得金額に応じた税率を乗じて最終的な所得税額を求めます。ただ、その所得税額からさらに差し引けるものがあります。それが税額控除です。

給与所得者の場合、一番よく利用するのが住宅ローン控除でしょう。住宅ローンを利用して自宅を購入した場合、要件を満たすと住宅ローン控除が適用されます。最初の1年目は確定申告で行う必要がありますが、2年目以降は年末調整で行えます。

住宅ローン控除を年末調整で適用させるためには、「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」を提出しなければなりません。

年末調整で受けられる所得控除の中身

先に紹介した所得控除のなかで、「基礎控除」は納税者本人に適用されます。しかし、合計所得金額が2400万円を超えた場合、控除額が徐々に少なくなり、2500万円を超えた場合は適用されません。

そして、家族構成や配偶者の収入に応じて扶養控除や配偶者控除、配偶者特別控除が適用されます。配偶者に所得がある場合、その所得金額によっては、配偶者控除ではなく配偶者特別控除が適用されます。また、社会保険料は毎月の給与から天引きされていますが、その全額が控除の対象です。

さらに、本人や家族が障害者である場合は、障害者控除が適用されるほか、加入している保険に応じて、生命保険料控除や地震保険料控除が適用されます。

生命保険料控除や地震保険料控除の適用を受けるためには、各保険会社から送付される「保険料控除証明書」が必要ですので、忘れずに準備しておきましょう。

これらの控除に関する情報は、年末調整時に配布される「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」や「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」、「保険料控除申告書」にて申告します。

年末調整で行えない場合は必ず確定申告を!

所得控除のなかには、年末調整で行えないものがあります。その代表的なものが「医療費控除」でしょう。年間に一定額以上の医療費を支払った場合は、その額を所得金額から控除できますが、適用を受けるには確定申告にて行う必要があります。そして、所得税額が再計算され、その差額が還付されるしくみです。

また、ふるさと納税も寄付金控除の対象ですが、年末調整では行えないため、「ワンストップ特例」を利用するか、ワンストップ特例の要件を満たさない場合は確定申告で行う必要があります。せっかくの控除を無駄にしないためにも、確定申告が必要か、必要ならどのような書類が必要なのかを事前に調べて準備しておきましょう。

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