古里や時代の変遷を表現 画家・木嶋さん(山形市出身)個展が開幕

最上川をイメージした作品について説明する木嶋正吾さん(右)=山形市・山形美術館

 山形市出身の画家で多摩美術大教授の木嶋正吾さん(69)=東京=の個展「ゼロ[から]の絵画」が3日、同市の山形美術館で開幕した。木嶋さんは約40年にわたり金属片を使った抽象画に取り組む。会場には樹氷や最上川、紅葉といった山形の風景をイメージした作品が並び、来場者はじっくりと見入っていた。

 木嶋さんは同大大学院美術研究科修了。30代の頃、訪れた病院で金属の機械に囲まれながら懸命に生きる人を見て、胸を打たれた。金属に神々しさを感じ、作品に取り入れるようになった。幾何学的な構成で金属片を貼り付けるレリーフのような絵画「零度」シリーズを手がけている。

 初期から最新作まで、横3メートルを超える大作を含む約50点を展示。初期作品は黒や白、茶色といった単色の画面に三角や四角の金属片を並べて凹凸を出している。2000年代以降は淡い緑や青、黄など明るい色合いが目を引くコラージュが主流に。展覧会のチラシや手紙などを貼って剥がして着色し、古里の風景やさまざまな問題を抱える今の時代を表現している。

 木嶋さんは「貼って剥がして出てくる偶然性を大事にしている。形や色など思いがけない出合いがある。シンプルで明快な20世紀と複雑化する21世紀、作品を通じて時代の変遷を楽しんでほしい」と話す。

 展示は19日まで。ギャラリートークは19日午後2時から木嶋さんが、5、12、19の各日午前11時から学芸員がそれぞれ担当する。主催は山形美術館、山形新聞、山形放送。

© 株式会社山形新聞社