小学校跡地の「宅地化」案に住民なぜ反発? 「売却あり得ない」「もってのほか」批判相次ぐ

廃校後に敷地を売却する案が浮上している南小倉小(宇治市小倉町)

 京都府宇治市は、市西部の西小倉地域で進める小中一貫校の新設に伴い、2026年春で廃校となる3小学校の跡地の利活用について、12月に基本方針を定める。うち1校の敷地を民間事業者に売って住宅を誘致する案が浮上しており、公共施設としての活用を求める住民から反発の声が上がっている。

 小中一貫校は西小倉、北小倉、南小倉の3小学校と西小倉中学校を統合し、現在の同中学校の校地に新校舎を建設する。売却案が持ち上がっているのは南小倉小学校だ。

 3小学校の跡地を巡っては、宇治市教育委員会が設置した小中一貫校整備検討委員会・地域部会が昨年12月から議論してきた。メンバーは地域団体やNPO法人の代表者、学校関係者たちで、9月に検討結果をまとめ、市へ提出した。

 この中で、南小倉小学校(敷地約2万平方メートル)については「住宅地に隣接する場所にあり、地域に子どもや若者、子育て世代を増やすためには、新たな暮らしの場が必要」とし、売却して住宅地にするよう提案した。背景として、人口減少や高齢化に伴うコミュニティーの担い手不足といった地域課題を挙げた。

 売却する場合は、生活への悪影響を考慮して、高層マンションの禁止などの条件を設定するよう示した。また売却益を活用して「地域のまちづくりや教育活動を進めてほしい」とも提起している。

 一方で、西小倉小学校(同約1万8千平方メートルヘクタール)は子どもから高齢者までが使える「みんなの居場所」、北小倉小学校(同約1万7千平方メートル)は「スポーツの場・遊びの場」と、それぞれ公共施設としての利用を求めた。

 宇治市はこの案を「検討の方向性」と位置付けた上で、12月をめどに基本的な方針を策定するとしている。

 
 「売却はあり得ない」「住宅地はもってのほか」。宇治市が18、20の両日に開いた住民向けの説明会では、参加した計約60人から南小倉小学校の売却案への批判が相次いだ。

 反対する参加者からは、民間事業者に売り渡すことにより「市のコントロールが利かなくなるのではないか」と乱開発の恐れを指摘する声が上がった。

 3小学校のうち新設される小中一貫校に最も近い距離にあることを踏まえ、「中学生が部活動に使う第2グラウンドとして整備してほしい」という要望もあった。

 また地域の公共施設を充実させるため、図書館や福祉施設などとしての利用を求める意見が出た。「整備検討委員会の案に市の誘導があったのではないか」「住民の意見は本当に反映されるのか」といった疑念も噴出した。

 宇治市政策戦略課の担当者は「まだ何も決めていない。整備検討委の案だけでなく、この説明会で出た意見も参考に市として判断する」と答えた。

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