サワラ、どこへ行った? 本県沖の9月漁獲量、平年の1%

今季は不漁に見舞われている「庄内おばこサワラ」=鶴岡市

 本県沖で秋から12月ごろにかけ水揚げのピークを迎えるサワラが、不漁に見舞われている。県によると、9月の漁獲量は44キロと平年同月比のわずか1%。南方系の魚で、温暖化の影響か本県では2007年ごろから漁獲されるようになり、県などは「庄内おばこサワラ」としてブランド化も進めている。不漁は全国的傾向で、さらなる海水温上昇などの海洋環境変化が影響しているとの見方がある。

 サワラは暖水を好むとされ西日本が主漁場だった。本県沖ではトラフグとともに20年ほど前から揚がるようになった。はえ縄で漁獲し、独自の生け締め・神経抜き技術で長期間の鮮度維持を可能にしたものは「庄内おばこサワラ」として、10年からブランド化の取り組みを始め、首都圏などで高値取引されてきた。

 県漁業協同組合によるとサワラの水揚げ量は、07年度の433キロに対し、15年度は145トンまで増えた。ただこれをピークに減り、昨年度は7.5トンにまで落ち込んだ。県漁協由良総括支所(鶴岡市)によると、今季はサゴシやサゴチと呼ばれるおおむね1キロ未満の若い魚が目立つという。庄内おばこサワラの出荷も少ない状況となっている。

 県水産研究所の担当者は詳しい理由は不明としながら「要因の一つとして、海水温の高さが考えられる」と推察する。今年9月の同研究所周辺の海水温は平年より2.8度も高かった。今夏の猛暑による短期的な影響の可能性とともに、国立研究開発法人水産研究・教育機構によると、日本海の水温上昇は、大陸が近いため上がりやすいなどの地形的要因も挙げられるという。

 日本海側で水揚げされるサワラは東シナ海周辺で生まれ、成長しながら本県沖まで回遊してくるという。漁獲量減少は京都府や石川県などでも同様で、特に本県沖を含む日本海北部で激減している。本県沖は古くから漁獲されてきたサケやハタハタなどの水揚げも近年低調。サワラは温暖化に伴い本県沖まで北上してきたとみられるが、南方系の新顔にとっても本県沖は温度が高過ぎる状態になっている可能性がある。

 地球環境学などを専門とする奈良教育大の及川幸彦准教授は、海水温上昇は温室効果ガス排出による地球温暖化の影響が考えられると説明。「サワラのように山形県沖で取れる魚の種類が変わってきている。それに適応していくことが必要ではないか」と、漁獲魚種の転換も視野に入れることを指摘した。

海水温の上昇が確認されている本県沿岸部=鶴岡市・由良漁港

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